アントニオ・コスタ首相は2月16日「不動産投機と闘う」ためゴールデンビザの新規発給を停止すると発表した。
居住権の購入
ゴールデンビザ制度は、外国投資を呼び込む目的で世界中で活用され、欧州でも資本誘致や観光振興に熱心な各国が提供している。ユーロニュースによれば、ゴールデンビザを取得した裕福な外国人は「原則的に居住権を『購入』でき、場合によっては国内に住む必要もない」という。一方、人気が高まるにつれて「安全保障上のリスク、マネーロンダリング(資金洗浄)や脱税、テロ資金調達、汚職、組織犯罪の浸透を許すなど、EUの規範と相容れない」との理由でEUが抑制に動き、論争も巻き起こっている。欧州議会の市民的自由委員会は、ゴールデンビザ制度を「倫理的、法的、経済的観点から好ましくない」と非難している。
各国内でも、特に人気の高い観光地などで不動産価格が上昇を続け、外国人がAirbnbなどのサービスを通じて貸し出すために民家やアパートを買い上げることで、地元住民が追い出され、政府への抗議の声が上がっている。
ポルトガルの住宅危機
英フィナンシャル・タイムズは「ポルトガルが制度の終了を決定した背景には、住宅価格の高騰により、特に国内屈指の大都市であるリスボンとポルトで、多くの地元住民が妥当な居住物件を見つけるのに四苦八苦していることへの懸念があった」と報じている。ロイターによると「西欧の最貧国の1つ」であるポルトガルでは家賃や住宅価格が高騰しており、2022年は「労働者の過半数が月収1000ユーロ(約14万円)を下回る中、リスボンだけでも家賃が37%跳ね上がった」という。
ポルトガルにおけるゴールデンビザ制度の終了は、住宅危機の緩和を目指す施策の一環で、遠隔地を除いてAirbnbをはじめとする短期休暇用賃貸物件の新規認可禁止が含まれている。制度終了にともなうコストは少なくとも9億ユーロ(1300億円)と見積もられているが、ポルトガルは2012年の制度開始から68億ユーロ(約9780億円)の投資を享受し、その大部分は不動産につぎ込まれてきた。
コスタ首相によれば、政府の決定は3月に議会で承認される見通しだ。
アイルランドもゴールデンビザ廃止
ポルトガルの決定に先立つこと1週間、アイルランドがゴールデンビザ制度に相当する「移民投資家プログラム」を廃止した。50万ユーロ(約7200万円)の寄付か、100万ユーロ(約1億4000万円)の投資を3年間にわたり行うことと引き換えにアイルランドの居住権を付与する制度で、11年前に導入された。主にロシアと中国の裕福な投資家に利用され、12億5000万ユーロ(約1800億円)を集めた。
ロシア国籍者に対しては、ウクライナ侵攻をめぐる制裁措置の一環で、すでに2022年3月に制度の適用を停止していた。
スペインも続くか
スペインでも議論が高まっており、不動産購入に基づくゴールデンビザを廃止する法案が議会に提出されている。SchengenVisaInfo.comによると、2013年に導入された不動産投資ビザ制度では、外国人がスペイン国内で少なくとも50万ユーロ相当の不動産を購入すればスペインの居住権を取得できる。左派政党マス・パイスは、この制度が住宅価格に影響し、特に大都市や人気の高い観光地で国民を住宅市場から追い出しているとして、廃止を訴えている。
(forbes.com 原文)