北米

2023.02.13

非課税資格を悪用? 米モルモン教会の13兆円「極秘ファンド」に調査のメス

米ユタ州ソルトレークシティにあるモルモン教会の総本山、ソルトレークテンプル(Photo by: Universal Images Group via Getty Images)

米国のキリスト教系の新宗教、末日聖徒イエス・キリスト教会(通称モルモン教会)が、1000億ドル(約13兆2000億円)にのぼる投資ファンドについて情報を開示していなかったとして、米国証券取引委員会(SEC)が調査を進めていることが明らかになった。

この極秘ファンドの存在は、3年あまり前、教会が税制を回避したり寄付者を欺いたりしながら資金を集めていると内部関係者が告発したことで明るみに出ていた。

ウォールストリート・ジャーナルの報道によるとSECは、モルモン教会の投資部門「エンサインピーク・アドバイザーズ」が、大規模な資産の運用者に特定の保有資産の開示を義務づけたSECの規定に違反しなかったかどうかを調べている。

同紙によると調査は進んだ段階にあり、最終的には和解に達する可能性が高いという。

フォーブスはモルモン教会にコメントを求めたが、反応がなかった。教会側は以前、このファンドは緊急時に備えたものだと説明していた。

モルモン教会員で元エンサインピーク従業員のデビッド・ニールセンは2019年末、教会が寄付金を集めた慈善基金で1000億ドルもの資金をため込んでいると米国内国歳入庁(IRS)に告発した。この資金は20年間まったく使われていなかったという。

ニールセンは、教会は資金を慈善活動に使っていなかったとして、エンサインピークが宗教団体の一部門として享受している非課税資格を剥奪するよう求めている。

ニールセンによると、エンサインピークの幹部はこの資金に関して、教会が「キリストの再臨」に備えて保管しておく考えのものだと職員に説明していたという。モルモン教会の教えでは、キリストの再臨にあたっては戦争が起きるとされる。

この幹部はウォールストリート・ジャーナルの取材に、コメントは誤解されていると語っている。また、教会側は税法違反は一切していないと同紙に述べている。

ニールセンは先月、エンサインピークがファンドについて虚偽の説明をしたとして、監視を求める覚書も米上院財政委員会に送っている。教会とエンサインピーク側は当局と協力する用意があるとしながらも、疑惑は「過去のもの」だとの認識を示している。

forbes.com 原文

編集=江戸伸禎

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