意外と少ない!?愛人が相続人になるケース
次はガラッと変わって、愛人がいるケースです。贈与の相談で比較的多いのが、相続人以外への贈与です。婚姻関係がない愛人やパートナーは相続権がないために、遺言書に記さない限り、遺産を相続することができません。
そのため、相続が発生する前に生前贈与でお金を渡しておこうというわけです。守秘義務があるので具体的にはいえませんが、おそらく愛人だろうと推測できるケースはよくあります。
「愛人であっても遺言書に書いてあれば相続できる」とよく書かれていますが、実際にそうした例はあまりありません。存在を秘密にしているから愛人なのです。見ず知らずの女性の名前が遺言書に出てきたら、大騒ぎになってしまうでしょう。それを避けるために、生前贈与で解決するわけです。
個人の場合には、損益計算書や貸借対照表、キャッシュフロー計算書などは作成しませんので、生前贈与しても明るみに出ることはまずありません。
税理士としては、贈与をした事実は知っていますが、贈与の場に立ち会うわけではないので、相手がどんな人なのかはわかりません。税理士が立ち会っても意味がありませんので、そういう依頼をしてくる人はいないのです。
もちろん、愛人以外にも血縁でない人に対して、贈与することはもちろん、遺言に記すことで遺産を相続することはできます。多くの場合は、孫、長年世話になった家政婦さんですが、ときには目をかけている若者に対する学費支援も耳にします。
ところで、愛人に子どもがいると、どうなるのでしょうか。その場合、認知していればほかの子どもと同じく、相続の対象になります。ただし、相続の場面で認知した子どもが何人も出てくると、たいていモメます。私たち税理士は、故人の戸籍に認知した子が何人も出てくると緊張が走ります。
天野隆(あまの・たかし)◎慶應義塾大学経済学部卒業。税理士法人レガシィ代表社員税理士、公認会計士、宅地建物取引士、CFP。相続専門税理士法人として累計相続案件実績件数は24000件を超える。アーサーアンダーセン会計事務所を経て、1980年から現職。『やってはいけない「実家」の相続』(青春出版社刊)他、99冊の著書がある。