そうしたファントークンの波は今、日本の体操界にも届き始めている。NFT事業などを展開するフィナンシェは、運営するトークン発行型のクラウドファンディング「FiNANCiE(フィナンシェ)」において今年12月上旬、2028年のロサンゼルス五輪出場を目指す日本男子体操界 期待の星、堀川 倫太郎の新規トークン発行が決定したことを発表した。
堀川は2008年群馬県生まれの13歳(記事執筆当時)。小学校5年生から4年連続で15歳以下のジュニアナショナル強化チームに選抜され、全日本ジュニア大会Aクラス 個人総合1位をはじめ、2019年より3年連続で日本一に輝いている。2021年には、アテネ五輪金メダリストの米田 功監督が率いる「徳洲会体操クラブ」と契約。中学生でシニアのトップチームと直接契約するのは、異例のことだ。
米田監督は堀川がトークンを発行する背景として、次のような課題をあげる。2020年東京五輪では日本代表選手が男子総合で3連覇をするなど、日本体操界の強さは世界で証明されている。その反面、オリンピック期間以外には体操選手のメディア露出が減り、ファンの注目度が下がる傾向にある。そして十分な支援が集まるのは一部の限られた選手のみで、それも期間限定であるため、選手が長期的なキャリア形成に取り組むことが難しい現状がある。
今回の堀川によるトークン発行では、ファンコミュニティの創造によってファンとのエンゲージメントを持続的に育むことや、現役中、トレーニングや大会参加などのために必要となる資金、さらには引退後のスクール開校や競技普及活動など、選手として生涯にわたって価値を創造していくための資金獲得を狙っていく。
徳洲会体操クラブでも今年10月より同じ「FiNANCiE」上でファントークンを発行しているが、堀川のような一体操選手、しかも中学生がトークンを発行するケースはまだ極めて珍しい。
ファンとの長期的なエンゲージメント醸成や選手の中長期的なキャリア形成の難しさは、体操だけでなく、多くの国内スポーツにも当てはまる課題だ。日本体操界の次世代エース・堀川の試みが、解決のヒントになるかもしれない。