この臨床試験には276人が参加し、瞑想に取り組むグループと、抗うつ剤エスシタロプラム(日本名はレクサプロ)を服用するグループの2つに分けられた。試験期間は8週間で、被験者は、登録時と試験終了時に不安症状について記録した。試験開始日から12週目と24週目にも、フォローアップの評価が実施された。
マインドフルネスを基本にしたストレス軽減手法に取り組んだ被験者グループが行ったのは、週に1回の対面クラス(2時間半)、5週目または6週目の週末に丸1日のリトリートクラス、そして、毎日自宅で行う45分間のエクササイズだ。
不安症状の重症度を1から7まで(7が重度)で評価したところ、登録時は2グループとも平均で4.5だったが、瞑想などに取り組んだグループは平均1.35ポイント低下した。一方、抗うつ薬を服用したグループは平均1.43ポイント低下した。
ジョージタウン大学の不安障害研究プログラム(Anxiety Disorders Research Program)のディレクターを務めるエリザベス・ホージ(Elizabeth Hoge)は、今回の試験で得られた知見は、マインドフルネスを基本にしたストレス軽減プログラムが医療保険の支払いを受けるエビデンスになると述べている。
不安障害の患者を治療する医師は通常、抗うつ剤を処方するが、瞑想が不安障害の症状緩和に有効であることは、2009年の研究でも示されている。一方で、2017年のデータによれば、何らかの瞑想に取り組んだことのある米国人は15%しかいない。
マインドフルネスの手法に取り組んだ被験者のオルガ・カニストラーロ(Olga Cannistraro)は、今回の臨床試験に参加して、不安の症状を緩和する方法について視野が広がったと言い、「不安の症状を自覚したときに、対処する方法を自分で選ぶことができる」と述べた。
不安障害を抱えながら暮らしている人は、世界全体で推定3億7400万人にのぼる。2020年から2021年にかけての1年間で、およそ7600万人増えたことになる。
米国予防医療専門委員会は2022年9月、医師に対して、18歳から64歳までの成人を対象に、不安障害の検診を始めるよう推奨した。そのきっかけとなったのは、米疾病予防管理センター(CDC)が発表した研究だ。そのなかでは、2016年から2019年にかけて、不安障害と診断された未成年者が580万人、うつと診断された未成年者が270万人だったことが示された。
マインドフルネスを基本にしたアプローチ、つまり、「今ここで起こっていること」にもっと意識を向けるようトレーニングすることが、不安障害に関連した症状を和らげる方法として、一部の人に広がりつつある。
(forbes.com 原文)