じつは、人の体力がわかる指標がある。「無酸素性作業閾値」というやつだ。略して「AT」。軽い運動から徐々に強度を上げていくと、ある時点で有酸素運動から無酸素運動に切り替わる。その切り替わるポイントがATだ。このATの強度を保ちながら運動するのが、その人にとってもっとも効率がよいとされている。なのでATは、スポーツ分野だけでなく、リハビリ治療などにも役立てられている。
ところがATを知るためには、呼気を測定したり血液検査をしなければならず、特別な設備を備えた病院や研究機関でしか測ることができなかった。一般の個人がジョギング中にちょいと測るというワケにはいかない。
そこでファンケルは考えた。ATは、血液がどれだけ酸素を運んでいるかを示す酸素飽和度(SpO2)に関連している。SpO2は、コロナ対策で自治体が家庭に配ったりして話題にもなった、パルスオキシメーターで簡単に測れる。ということは、SpO2からATがわかるのではないか。そして実際に試してみると、SpO2と脈拍から算出した値(ST)がATの代用になることが判明したのだ。
つまり、SpO2と脈拍がわかればATがわかるということ。普通のパルスオキシメーターでもSpO2と脈拍が同時に表示される。近ごろではSp02が計れるスマートウォッチもある。素人考えながら、ソフトウェアをちょちょいといじれば、ATがわかるスマートウォッチもすぐに作れそうな気がする。自分にいちばん合った、もっとも効率のいい運動ができるとなれば、成果も上がるだろうし、だいいち安心して続けられる。ATの表示は、これからの健康器具の必須機能になりそうだ。