データの制約があるにもかかわらず、分析においてあらゆる不確実性をしっかり考慮することができたと研究者たちは述べている。さらに、気候変動に対して最も脆弱な一部の国において、データのギャップを理由に無策を正当化することは無責任だと強調している。
「まれなケース」として、地球温暖化による猛暑の恩恵を受ける国もあると研究の主要著者でダートマス大学の地理学助教授であるジャスティン・マンキンは述べている。マンキンは「地球上で猛暑の恩恵を受けている国はほとんどない」としながらも、欧州や北米の一部地域は理論的には温暖化によって恩恵を受ける可能性があることが研究で示されている。これらの地域は、世界で最も裕福な地域の1つであり、二酸化炭素排出量が最も多い地域でもある。
気候変動は非常に長い時間をかけて起こり、その変化は穏やかなため、人為的な気候変動の影響や損害、さらにはその存在を証明することはこれまで困難だった。しかし世界の主要な科学者たちは、未曾有の温暖化の原因が人間活動にあることを圧倒的かつ確証的に指摘している。気候の変化は嵐、熱波、寒波、洪水、山火事などの現象の頻度を高め、深刻さを増幅させている。二酸化炭素の排出を削減するための早急かつ抜本的な改革がなければ、温暖化が進むにつれて異常気象の発生はさらに悪化すると予想される。
研究者らによると、今回の研究は気候変動によって引き起こされる猛暑の経済的コストを定量化したものとしては初の研究の1つだ。研究者らは2013年以降のデータは分析しておらず、猛暑の頻度と深刻さが増している現在までのデータを含めれば経済損失額は大幅に増える可能性が高い。特に今年は英国をはじめ、中国や欧州の一部で最高気温の記録が数多く更新された。この研究は、気候変動の原因を最も作りだしている富裕国と、気候変動の影響を受けている最貧国との格差を浮き彫りにしている。予防や被害修復のための費用の大部分を誰が負担すべきか、国家間の議論の高まりに拍車をかけることになりそうだ。
(forbes.com 原文)