園長に就きたい保育士は16%、「責任が重すぎて自分には無理」

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保育研究プロジェクト「子ねくとラボ」を運営する明日香は、現役保育士106名を対象とした意識調査を発表した。それによると、日本の保育士は全体として子どもに対して非常に親身であり、保育士としての志が高く、責任感も非常に強い反面、8割以上が園長にはなりたくないと答えていることがわかった。

この意識調査では現役保育士108名に10の質問を尋ねている。理想となる保育士や先輩がいるかとの問では70パーセントが「はい」と答え、将来なりたい保育士像があるかとの問では7割近くが「できている」と答えている。ここで「できている」と答えた保育士が描いている保育士像については、「子どもの発達、気持ちに寄り添える保育士」と答えた人が8割を超えている。また自分が思い描く理想の保育士像について「子どもが子どもらしく本来の姿で過ごせるような環境を作るや「子ども一人一人に丁寧に関わりながらも、 全体をまとめられる保育士」と答えるなど、保育士のプロ意識と志の高さがよく伝わってくる。



しかし、「園長になりたいか」との質問となるとネガティブな答が多くなった。「そう思う」と答えた人は全体の16パーセントに過ぎず、「そう思わない」が8割を超えている。また、園長に対するイメージを問われると、「責任が大きい」という答が8割を超えた。園長になりたくないと答えた人に理由を尋ねると、「責任が重く自分には無理」と答えた人が7割強あった。つまり、今でさえいっぱいいっぱいで頑張っているのに、さらに重い責任を負わされるのは辛いということだろう。

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日常の業務で手一杯であることは、将来の目標ができているかという質問にも現れている。具体的な将来目標を持っていると答えた保育士は約半数。目標を持てない残りの半数に理由を尋ねると、「普段の業務の中で具体的な目標を意識することが難しい」、「具体的な目標を考えたことがない」、「何を目標におけば良いかわからない」が上位を占めた。

これらのことから日本の現役保育士たちは、子どもが大好きで、子どもの成長と保育園のあり方を真剣に考えているが、将来への不安も半分という現状が浮かび上がる。保育士のキャリア、つまりこのまま保育士として頑張った先に何があるのかが見えない状態では、いずれ意欲も失いかねない。やる気のある有能な人たちがやる気を出せない職場というのは残念であり、社会の損失でもある。みんなでよく考えたい。

文 = 金井哲夫

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