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2022.08.24 08:00

異才のYouTuberげんじ アパレル事業で年商30億円も視野に


それだけではない。ランキングやお気に入り「いいね」など、投稿に対する反応やデータを分析し、活用していた。

「分析の結果、カジュアルとキレイ目の“中和”を目指したファッションが一番オシャレに見える、という独自の法則ができました。そういったコーディネートが、一番人気が高かったんです」

この「中和理論」を、YouTubeを開始した2016年当初から提唱してきた。服の見せ方や選び方、コーディネートの仕方などの基本理論として伝えていったところ、「わかりやすい」「納得」「マネしやすい」などと、共感の輪が広がっていった。


「メンズファッションの黄金バランスを公開します。最強コーディネート術です。」/ げんじのYouTubeチャンネルより

このようにげんじの投稿が多くの「共感」を生むことができるのは、SNSごとにコンテンツのつくり方や伝え方を変えていることも関係しているだろう。

例えば、WEARは文字を入れた投稿が禁止されているので、スタイリングやコーディネートの見せ方を工夫しつつ、シンプルな印象を与えるように意識している。Instagramは、熱が強いファンがフォローしている傾向があるため、自身のブランドに寄り添った発信が多めだ。そして、最も重視しているYouTubeでは、動画だからこそ伝えられる「視覚情報」を意識している。

「素に近い状態で出演しているので、親近感を持ってもらえます。見知らぬ人よりも知っている人に教えてもらった方が受け入れやすいだろうから、そうしたところは意識しています」

チャップリンの言葉に背中を押され


YouTuberとして活動していくうちに、視聴者から「げんじさんがつくった服が欲しいです」「ブランドを立ち上げてください」という要望が増えてきた。

「自分としても、『今までとはまったく違う形で、皆さんの人生に良い影響が与えられる』と考え、ブランドを立ち上げることを決めました」

こうして2017年にMODERN TIMESを設立し、D2Cアパレルブランドの「LIDNM(リドム)」をスタートした。

ブランド名は、イギリスの映画俳優、チャールズ・チャップリンのWhat do you want meaning for? Life is desire, not meaning.「何のために意味を求めるのか。人生は願望だ。意味じゃない」という名言の「Life Is Desire, Not Meaning.」の頭文字をとって名付けた。

げんじのチャップリン好きは、両親譲りだ。幼いころから家族でよく映画を観ていて、その中で両親が好きだったのが、チャップリンの映画だった。

「ストイックに画作りをする姿勢や、戦争を扱って批判されたりもしていたけれど、前例がないことをやろうとしているところなど、尊敬しているし、僕も似ているところがあるなと感じていました」

「なんでこんなYouTubeをやっているんだ」「ブランドを立ち上げやがって」といった批判的なコメントが増えた時期もあった。そんな中でも、自分の信念に従ってストイックにコンテンツをつくり上げ、前例がないことに挑戦し続けられたのは、チャップリンの言葉に背中を押されたからだった。
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文=松下久美 構成=田中友梨 写真=帆足宗洋(AVGVST)

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