ビジネス

2022.07.15

人生にサードプレイスを、地域活性化に関係人口を


観光資源にも勝る、意外な魅力


人を引きつける観光資源が乏しいからと、諦めてかかる自治体もあるだろう。だが、上川町の話を聞く限り、観光資源の力以上に、人と人のつながりを膨らませることで、そのコミュニティ自体が町の魅力になっているように思える。これは新しい地方のあり方として、大いに注目したい。

移住者も重要だが、関係人口を増やしたいという地域は増えており、この言葉自体がトレンドワードにもなっている。逆に言えば、「関係したい」というニーズが高まっているいまは、地域にとっては大きなチャンスだ。

とはいえ、なぜ上川町はコミュニティを膨とはいえ、なぜ上川町はコミュニティを膨らませることができているのか。私が感じたのは、シンプルに、町役場職員の圧倒的な行動力だ。3人ほどの主力職員が、あちこちのイベントに顔を出したり、数珠つなぎで人脈を広げたり、運動量を絶えず下げないことで、世に増幅している「地方に自分のもうひとつの居場所(サードプレイス)を」という潜在ニーズに働きかけ、打率を上げていった。

そのなかで、有名メディア企業の応援を得られるようになり、前述の三星グループ代表をはじめ映像クリエイター、ミュージシャンなども関係人口として参画。人が人を呼ぶサイクルの形成に成功した。そのコミュニティの力が化学反応を起こし、今後想像以上のコンテンツが上川町に誕生するだろう。

観光資源ファーストだった地域活性ではなく、人のコミュニティファーストな地域の活性化というあり方は、いまの時代にとてもマッチした手法だと感じるとともに、いつの間にか上川町のファンになっている自分に気づいた。


なかやま・りょうたろう◎マクアケ代表取締役社長。サイバーエージェントを経て2013年にマクアケを創業し、アタラシイものや体験の応援購入サービス「Makuake」をリリース。19年12月東証マザーズに上場した。

文=中山亮太郎 イラストレーション=岡村亮太

この記事は 「Forbes JAPAN No.096 2022年8月号(2022/6/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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