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2022.06.29

富豪にも「国別格差」? 米国の長者たちが39%を誇る理由

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こんにちは。読者の皆さんには、いわゆる「1パーセント」の方はいらっしゃるでしょうか……。そう、1パーセントとは、その国でトップ1%に入る富豪のこと。筆者にとってはあいにく遠い世界ですが(汗)、今回は世界のスーパーリッチの影響力について、データとともに迫ってみましょう!

フォーブス ジャパンが最近発表した最新の日本長者番付によると、番付入りした富豪のうち38人が1年前から資産を減らしており、50位の資産額は今回、昨年の11億5000万ドルから9億2500万ドルに減少しています。

最新の番付で首位となったのは、昨年2位だったファーストリテイリングの柳井正氏。保有資産は前年比約44%減の約236億ドル(約3兆円)。

2位はキーエンス創業者、滝崎武光氏。やはり保有資産は約42億ドル減の約216億ドル。3位は昨年1位のソフトバンクグループ孫正義氏。資産額はおよそ211億ドルで、昨年の約444億ドルから50%以上減でした。トータルで、富豪50人の資産総額は前年の7割ということです。

ここで目を世界に転じてみましょう。

フォーブスの「世界の億万長者」によると、その半数以上が米国に住んでいるというほど、米国は超富裕層の拠点となっています。米国に富が集まる理由は多々ありますが、その代表的なものに「税制」が挙げられるでしょう。米国も含めた先進国では段階的な累進課税方式をとっている点では共通しています。

しかしながら、所得税においては主要国に比べて8%も限界税率が低いのです。相続税の限界は日本と比較すると15%も低く、キャピタルゲインへの課税においては各国よりもさらに富を溜めやすい制度となっています。さらに「ステップアップ」と呼ばれる抜け道も見られません。過去には、超富裕層が中間層よりも低い実効税率を支払うという事例すらあったほどです。驚きを禁じ得ませんが……

米国では超富裕層は「1パーセント」と呼ばれているそうです。凄いネーミングですが、各国の上流階級が保有する資産が国全体に占める割合を、この100年の変遷とともに見てみましょう。



1900年以降の推移を表したOECDのデータによると、米国の「1パーセント」が保有する富は、イギリスやフランスとは明らかに異なったトレンドを見せていますね。

20世紀以降、1パーセントが保有する富の割合が約60~70パーセントになったヨーロッパ諸国と比べると、アメリカの超富裕層は歴史的には決して豊かではなかったと言えます。しかし、ヨーロッパはで1パーセントの富の割合が大きく減少して底を打ったあとは長期的には大きな動きが見られないのに対して、アメリカではV字というほど急角度ではないものの、1980年代初頭の「底」から上昇を始め、OECDが公表している最新年度である2014年では、再び39パーセントまでに達しています。

この背景として顕著なのは、1980年代以降の歴代政権の税策の影響です。レーガン大統領による「レーガノミクス」では限界税率の大胆な引き下げがなされました。日本でも近年聞かれた「トリクルダウン」は記憶に新しいでしょう。富める者が富めば、貧しい者にも自然に富がこぼれ落ち、経済全体が良くなるという考え方です。この信念は、ジョージ・W・ブッシュ大統領の下でさらに強固になります。ドナルド・トランプ大統領の下では、税率がさらに減少しました。

いまから8年前の2014年の時点で、米国はOECDのデータセットで最も古い数字、1913年の上位1パーセントが保有する富の45パーセントに再び近づいています。さらに、コロナウイルスを好機に超富裕層がその富を急拡大させていることはご存知の通りです。

仕事や生活における私たちのモチベーションはさまざまだと思いますが、富豪を目指すという点では、税制においては圧倒的に米国が有利なことは間違いなさそうですね……。 

世界に羽ばたくならStatista! をデフォルトにすべく、筆者も日々汗をかいております。それではまた次回、データで発見☆しましょう!


(世界最大級データポータル「Statista」の記事はこちら:The Fall and Rise of the U.S. Top 1 Percent)。

文=津乗学

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