ロシアに経済制裁を課す欧米諸国が特に重視しているのは、(天然ガスなどよりも)より収入が多い原油だ。米国とポーランドはそれぞれのエネルギー消費に大きな割合を占めるものではないロシア産原油の使用停止を決定した。
リトアニア、フィンランド、エストニアは、ロシアからの輸入量を50%以上削減。英国は、年末までに輸入を停止すると発表している。また、ドイツはウクライナへの侵攻開始まで35%だった原油の輸入量に占めるロシア産の割合を、現在までに12%に引き下げている。
欧州連合(EU)も、年末までにロシア産石油を禁輸とすることで合意した(ただし、ハンガリーやスロバキアなどには、一部例外を認めている)。
相場上昇で効果に陰り
フィンランドに拠点を置く独立研究機関、エネルギー・クリーンエア研究センター(CREA)は先ごろ、船舶とパイプラインによる化石燃料の輸送に関するデータに基づき、ロシアの輸出収入を試算した結果を公表した。
それによると、今年5月の1日あたりのエネルギー輸出収入は、昨年5月の約6億3300万ユーロより9500万ユーロ減少。制裁は効果をあげたように見える。だが、実際には国際相場が上昇したことにより、平均8億8300万ユーロ(6月20日の為替レートで約1250億円)に増加。前年同月比では39%増となっていた。
ロシアのプーチン大統領は西側諸国の制裁について、「逆効果だ、価格が世界的に高騰する」と主張した。国際的な需要増の原因を詳しく探り出すのは困難だが、価格は実際に上昇している。
いま分かっていること
ロシアがウクライナに侵攻して以降、中国、ドイツ、フランス、インド、アラブ首長国連邦、サウジアラビアは、ロシア産原油の輸入量を増やしている。ロシアにとって最大の輸出先となっているのは現在、ドイツを追い越した中国だ。