米アマゾン・ドット・コムが展開するスーパー「アマゾン・フレッシュ」のように、店のすぐ前に充電器を置くところもある。しかし筆者の経験では、そうしたスペースが本来なら駐車すべきではない内燃エンジン車に陣取られていることも多い。「EV専用」がハイブリッド車にも当てはまると勘違いした人が使っている場合もある。
残念なことに、公共EV充電器の多くはいまだに220ボルトのレベル2で、多くの駐車場で設定されている2時間の駐車制限時間内には、わずかな量しか充電できない。さらに、充電器が故障していたり、特定の支払い方法が使えなかったり、そもそも自分の車に接続できなかったりということもある。
一番便利で経済的な方法は自宅での充電だが、今後EVがさらに普及すれば、長距離型モデルで長旅に出たり、バッテリー残量がなくなりかけてしまったりしたときに使えるレベル3の公共DC急速充電スタンドのニーズが高まるだろう。EVの最新モデルの中には、レベル3のスタンドを使えば20~30分で80%充電できるものもある。
解決策の一つとして、店舗やレストラン、ホテル、ガソリンスタンドに対し、充電設備設置の助成金制度を拡大することが考えられる。しかし、設備設置のコストは5万ドル(約650万円)以上ともされ、たとえ米連邦政府の助成があっても、多くの事業主にとっては経済的に難しい。
そんな中、フォルクスワーゲンの子会社エレクトリファイ・アメリカ(Electrify America)は、利便性を高めた公共充電スタンドを各地に設置しようとしている。「周辺地域にインスピレーションを得たデザインを採用した顧客志向のステーション」をうたっており、「ヒューマンエクスペリエンスの向上に焦点を当てた」快適な空間となるという。
1カ所につき、最大20台の最新DC急速充電器を設置。旗艦ステーションとなる施設では、明るい照明や防犯カメラ、太陽光発電を行う張り出し屋根、豪華なラウンジやイベントスペースなど、デザインや快適さを重視した設備も備える。
一部の商業施設に併設される充電スタンドでは、スタッフが駐車を代行するバレーサービスや、購入品を車まで届けるサービスを提供。一部施設では、一般的なガソリンスタンドで買える軽食とは一線を画す食事や買い物が楽しめるかもしれない。
エレクトリファイ・アメリカの次世代型旗艦ステーションは既に、カリフォルニア州のベイカーやサンタクララなどにオープンしており、今年から来年にかけて同州のサンタバーバラ、サンフランシスコ、サンディエゴ、ビバリーヒルズに加え、ニューヨークのマンハッタンやブルックリンに新設される予定だ。成功すれば、同社や他企業はさらに多くの独立型EV充電スタンドを設置することだろう。