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2022.05.09 14:30

北海道の森を世界へ。自然美との融合がデザイン家具を強くする

自社製品に腰かける染谷哲義。本社ロビーにはアイコニックな8種類の椅子のカラーバリエーションが美しく配置されている


「惨敗」から学んだデザインの妙


だが、そのデザイン力が世界から評価されるまでには苦労の道のりがあった。カンディハウスは05年に、ドイツの古都ケルンで開かれた「ケルン国際家具インテリア見本市(imm cologne)」に初出展した。ドイツは創業者である長原實(故人)が、若いころに修業した土地。長原は、北海道産材を使って欧州で製造された家具が、世界中に高級家具として輸出されていることを知り衝撃を受け、後に帰国して旭川で創業した経緯がある。
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しかし、「最初の挑戦は惨敗でした」と染谷は振り返る。創業当初からスカンジナビアデザインを基調としてきたが、ブースを訪れた現地ディーラーから「隣国の北欧風家具をなぜ高額で買わねばならないのか」と指摘された。「実ビジネスになった案件はゼロ。デザインに特性をもたない製品は認めてもらえないのだと痛感しました」。

日本らしくて世界で通用するデザインとは何か──。そのイメージがつかめず苦悩した。そこで海外クリエイターの客観的な目線で日本らしさを発見してもらい、欧州で通用するデザインと組み合わせることを考えた。


本社工場では、椅子などの家具製品を職人たちが一つひとつ丁寧に仕上げる
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06年に世界で活躍するドイツ人デザイナー、ペーター・マリーにアプローチして日本に招き、京都の神社仏閣や奈良の竹林など、日本の「風土」を体感してもらった後、旭川へ。初来日のマリーが見た日本の景観は、ヨーロッパ人の嗜好に刺さるデザインと化学反応を起こして「tosai(東西)」という家具シリーズを生み出した。「日本のミニマルで直交的な線とデザインが木製家具と見事に融合していました」。

実際、再挑戦した07年のケルン見本市でtosaiは韓国・済州島のプロジェクトをはじめとする複数の受注を得た。染谷は世界に通じるデザインの妙を見た思いだった。


デザイナーの深澤直人と組んで手がけた人気シリーズ「KAMUY(カムイ)」

デザイン力と生産技術を磨いたカンディハウスは現在、韓国、シンガポール、オーストラリアなどアジア大洋州を中心に13カ国・地域で自社ブランドを展開するまでになった。コロナ禍で家庭用の家具需要が伸びるなか、旭川家具の名と北海道の森を世界に広めている。

染谷哲義◎東京都出身。明治学院大学卒。化粧品メーカー、ノエビアの宣伝部に従事した後、1996年にカンディハウス入社。プロモーション部門で働き、17年に常務、20年に専務。21年3月に代表取締役社長に就任。

カンディハウス◎1968年、北海道旭川市に創業。資本金は8000万円、従業員数は268人。2021年12月期の売り上げは31億7000万円。デザインを重視した木製家具を製造販売している。近年は北海道産の木材を積極的に使用。21年5月にはリブランディングを実施した。

文=三河主門 写真=吉澤健太

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