ビジネス

2022.05.07

1980年代から始まったアップルとハリウッドのつながり

Photo by Neil Godwin/Edge Magazine/Future via Getty Images


ジョブズの世界観とソフトウェア


盛田のソフトウェアに対する考えは、ジョブズの世界観と一致していた。筆者はジョブズと何度も議論をしたが、彼はアップルが最初はソフトウェア会社だったと繰り返し述べていた。ジョブズは、優れたOSやUI、アプリケーションがなければ、アップルが作るハードウェアには価値がないということを理解していた。彼は、当初からMac独自のOSやユーザーインターフェイスの開発に多くの時間を費やし、使いやすく、機能的な製品にしようとしていた。

映画やコンテンツに対する盛田の考えがジョブズやアップルの戦略に多大な影響を与え、それが現在のApple TV+やストリーミングメディアを強化する姿勢につながっていると言える。アップルがストリーミングメディアを強化していることを受け、多くの人は同社が映画スタジオを傘下に収めるべきだと主張しているが、筆者は2つの理由からこの考えには反対だ。

まず、1989年にソニーがコロンビア・ピクチャーズを買収した当時、映画コンテンツはビデオデッキとテレビでしか視聴できなかった。そのため、ソニーはデジタルの映画やコンテンツを制作できるハードウェアを開発するのに先立ち、現在のソニー・ピクチャーズを買収したのだ。

しかし、今では全ての主要スタジオや数百もの独立プロダクションスタジオが、何万本もの映画やテレビ番組を制作している。さらには、個人までもが、ユーチューブなどあらゆるデジタルハードウェアで視聴できるクリエイティブサービスを使ってコンテンツを量産している。

このことは、2つ目の理由の核心でもあり、「CODA あいのうた」がそれを証明した。アップルは「CODA あいのうた」の権利を購入してApple TV+で配信し、アカデミー賞を受賞した。つまり、同社はアカデミー賞受賞作品を制作するのに、自社のスタジオを必要としなかったのだ。

アップルは、今後もApple TV+で配信するコンテンツのライブラリを増強することに注力し、次のオスカー候補を探し続ける可能性の方が高いだろう。

アップルは、ハリウッドでは新参者だと思われがちだが、両者の関係には長い歴史がある。同社は、長い時間をかけて映画ビジネスの運営や、ハリウッドで勝つ方法について、習得してきたのだ。

編集=上田裕資

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