そうした人々に選ばれるものやサービスとは何か。ハイエンド・ブランディング・プロデューサーの山田理絵が、鎌倉にあるカルチャー発信基地「BLACK CUBE」 に各界のトッププレイヤーを迎え、そのヒントを聞き出す対談連載。
第二回は、シンガポールやアジアの美食家が集う「Hashida Singapore」と「Hashida Tokyo」の寿司職人兼オーナーシェフである橋田建二郎氏に、現地の人々のライフスタイルや価値観について聞いた(このトークの対談全編はこちら)。
橋田:ここ、すごく素敵な場所ですね。来る前からドキドキしちゃって。「ここだったらいいな」と思ってたところにタクシーが停まったんで、今日はちょっと嬉しいです。
宗徧流の家元邸とBLACK CUBEという焼けた古民家のアート空間のセットは、すごく素敵ですね。一つドアを開けるとそれまでとは全く違う、ある意味宇宙空間になっているところがすごい。日本に興味のあるハイエンド層はお茶体験をしたがりますが、山田家では、茶室のにじり口を潜ると別の世界があるっていう仕掛けが随所にあって、すっごくいいと思いますね。
山田:ありがとうございます。橋田さんがシンガポールでご覧になっているハイエンド層はどんな人たちですか?
橋田:僕のお客さんは、日本人よりも日本料理を食べ慣れています。その上、世界中を旅して、僕のところでその話をしてくれるので、僕も楽しい。そういう繰り返しでコミュニティができて、店で意気投合したお客さん同士が一緒に旅行に行っちゃったりするんですよ。それってかっこいい遊びだと思う。やっぱり「アンテナ張っている人」が富裕層だと思いますね。
山田:アンテナ張っている人、私もそれこそがハイエンドだと思います。ある雰囲気の中で意気投合して、その出会いがさらに他に転移していく。旅先でそれができたら最高ですよね。年齢層や職業はどんな人が多いですか?
橋田:「オールドマネー」と「ニューマネー」という方がいて、ニューマネーは僕と同年代の40、50代。それに加え、古い華僑の20代ぐらいの子息もいます。彼らは自分のお金か親のお金かわからないですけど、高いお店で毎日のように食べ歩いています。
職業はバンカーが多いですよね、お金を回している人たち。あと、シンガポールは船が停泊するので、オイル会社の人もいます。ただ、やっぱりアート的かというと違うかな。センスがいいかっていうと、ちょっと……という感じです。
山田:彼らのどのあたりにそう感じますか?
橋田:10人に聞いて10人が「絶対成功するよ」って言ったものしかやらない、みたいな感じなんですよ。オーストラリアやイギリスに留学して、そこでかっこよかったカフェを、ほぼそのまま持ってきてビジネスにしたりとか。「あっちで一度成功しているから大丈夫」と。「あれとこれをミックスして、こういう形の面白いのをやろうよ」っていう人はあんまりいないですね。
山田:意外とオリジナリティーがないというか、保守的なんですね。
橋田:保守的だと思います。店をオープンした後も、「ねえ、これっていいよね? いいよね?」って人に聞いて、ようやく安心感を得るって人が結構多いですね。