テクノロジー

2021.11.08 07:00

メタ(旧フェイスブック)のメタバースは医療に革命を起こすか


他のイノベーション企業大手は、すでに同領域へと進出している。筆者は2021年3月に投稿した記事で、マイクロソフトのプラットフォーム「メッシュ(Mesh)」が、いかにして複合現実(MR)を利用しながら医療の世界を破壊的に創造していく可能性があるかを説明した。

業界の大手各社は多額を投じ、拡張現実(AR)と仮想現実(VR)をどのように利用すれば、パーソナライズされたワンランク上の医療が提供できるのかを解き明かそうとしている。さらには、現代の遠隔医療の大きな足かせとなっている課題、つまり、「物理的なプレゼンス」をどうやって再現するのか、という課題にも取り組んでいる。

とはいえ、メタバースが持つ可能性はそれだけにとどまらない。メタバースが打ち出している接続性とはおそらく、人が「すること」ではなく、人が「存在する世界」を意味しているのかもしれない。メタバースがその約束どおりに、友人との新しい交流手段、新しい仕事の場、あるいは医療を受けられる場となれば、メタバースは新たな現実、つまり人々が時間の大半を過ごす場となる可能性がある。

もちろん、プライバシーやセキュリティ、患者の安全をめぐる疑問や懸念も、山のように生じることになる。メタバースというテクノロジーは将来有望であり、医療の実践を大きく変える可能性があるとはいえ、ヘルスケアで最優先されるべき患者のプライバシーとセキュリティを、メタバースは最終的にどう保護するのだろうか。実際、つながりが強まることで、重大な脆弱性が生じるおそれもある。したがって、適切な倫理的あり方を確保するためにどのような対策が講じられるのかという疑問が生じる。

さらに、「可能だからといって、そうすべきなのか」という問題も残る。ヘルスケアをそこまで積極的にデジタルとバーチャルの世界へと大幅移行させてもいいものなのか。その結果、とてつもない利点が得られるかもしれない。けれども、適切なかたちで行われなければ、患者と医者という人と人との関係性が脅かされる可能性もある。新たなイノベーションとテクノロジーの導入へと向かうなかで、医療において人間的な触れあいが失われることは許されない。

新しくエキサイティングで大胆なこの領域を先導していくフェイスブック改めメタには、物事を適切に進め、課題を解決していくという途轍もない責任が待ち構えているのだ。

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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