生命保険会社の数は40社ほどあるが、仮設住宅から公衆電話でかけるとなると順番待ちが必要で、各社に問い合わせるためにどれほどの労力と時間を要しただろうかと想像すると、とてもせつなくなった。
あれから10年、いまなら亡くなった親の保険加入の有無を簡単に調べられる制度がある。
死亡だけでなく認知症の場合も利用可能
その制度の名前は、「生命保険契約照会制度」。2021年7月1日に創設されたばかりの制度だ。
契約者(保険の申込みをした人)や被保険者(保険が掛けられている人)が亡くなった場合に、法定相続人、法定代理人、3親等内の親族などが生命保険協会に問い合わせると、その人に関わる生命保険契約の「有無」を、一括して生命保険各社に調査依頼してくれる。さらに調査結果をとりまとめて回答してもらえるというものだ。自分の家族の保険の有無を1社1社に電話して確認することを思えば、とてもありがたい。
東日本大震災のような大きな災害に巻き込まれると、保険契約の手がかりが失われてしまうことは少なくない。津波や洪水で家財が流されてしまったり、土砂災害で家が潰れてしまったりすると、保険証券を探し出すのは困難だ。
「通帳があれば引き落としでわかる」とは言っても、その通帳も見つからなければ、まずは再発行が必要となる。そのためには身分証明書が欠かせない。身分証明書の代表的なものである運転免許証が手元にない場合は、再発行に住民票が必要だが、身分証明書がなければ本人でも発行してもらうことは難しい。
そのうえ、保険料の支払いを終えている場合は、通帳では契約の有無はわからない。また、やみくもに保険会社に連絡をして保険の有無を確認しようにも、個人情報保護法の壁が立ちふさがる。保険金受取人や指定代理請求人、登録された親族でなければ、満足のいく対応はしてもらえないのだ。
そんなときに、この生命保険契約照会制度を利用すれば、生命保険協会に問い合わせるだけで、照会対象者に関わりがある生命保険の有無を、各社に問い合わせてまとめて回答してもらえるため、速やかな保険金請求が可能になる。
もともとは、東日本大震災後の2011年4月1日から運営が始まった「災害地域生保契約照会制度」を基にした制度だが、2021年7月から「被災時」だけでなく「平時」にも利用できるようになった。そのうえ「平時」においては、地域の制限なく、死亡・行方不明だけでなく認知症患者に関わる保険契約も調べられるようになった。
出典:生命保険協会のホームぺージより筆者作成
なお、利用できる人には、その主旨により、法定相続人、法定代理人などの細かな制限があることを付け加えておく。