新たな指針では、6つの一般的で危険な大気汚染物質の許容基準値が下げられた。WHOの報告書によると、新たな指針に従うことで数百万人の命が救われる可能性がある。
WHOはオゾン、二酸化窒素、二酸化硫黄、一酸化炭素などの量を減らすことを推奨しているが、最も重要なのは燃料燃焼により排出される汚染物質で血流と肺の両方に浸透する2つの粒子状物質、PM2.5とPM10だ。
英ロイター通信が報じたところによると、同報告書はPM2.5の推奨される許容量を、2005年の推奨量の半分に当たる1立方メートル当たり5マイクログラムとした。PM10は、1立方メートル当たり20マイクログラムから15マイクログラムに減っている。
WHOは、こうした特定の汚染物質の量を減らす対策を取れば他の汚染物質にも同様の効果があり、環境に有益だと述べている。
同報告書によると、大気汚染の影響から世界で早死にする人の数は毎年約700万人と推定されている。大気汚染物質は、子どもの間でぜんそくを引き起こし、肺の成長を低下させる可能性がある。また大人の間では、虚血性心疾患や脳卒中の原因となり得る。
WHOだけではない。オーストラリアとニュージーランドの医師らは7月、妊娠中の女性は大気汚染を極力避けるよう推奨した。また英国精神医学ジャーナル(The British Journal of Psychiatry)に8月に掲載された調査では、大気汚染に高度にさらされることが心の病と結びついている可能性が明らかにされた。
2019年には、世界人口の90%が2005年のPM2.5の推奨値を上回る地域に住んでいた。WHOは、新たな指標に従えばPM2.5による死亡件数の約80%をなくせると見積もっている。WHOは、化石燃料による排ガスを減らす上で、証拠に基づいた今回の勧告が政策決定者の役に立つことを期待している。
WHOのテドロス・アダノム事務局長は「大気汚染は全ての国で健康に対する脅威となるが、最も深刻な影響を受けるのは低・中所得の国だ」と述べ、「苦痛を減らし命を救うため、全ての国と、環境を守るため闘う全ての人に対し、この指針の活用を求める」と訴えた。