英医学誌ランセットに発表された査読済み論文によると、モデルナとファイザー、アストラゼネカのワクチンを接種した人(1回のみ接種の人を含む)は、ブレイクスルー感染によって入院が必要となるリスクが約70%低下していたという。
また、発症した場合でも、感染した最初の週に5つ以上の症状が出る可能性は、30%低くなっていた(接種1回よりも、完了した場合の方がさらに低下していた)。ブレイクスルー感染した人の割合は、1回目と2回目の接種の後で、それぞれ 0.5%、0.2%だった。
また、接種完了後のブレイクスルー感染を未接種者の感染と比較した場合、無症状となる可能性は2倍近く高まり、後遺症が出る可能性は2分の1程度になっていたという。
ブレイクスルー感染が起きる可能性には、年齢が関連しているとみられることも確認された。特に60歳以上のハイリスクの人にその可能性が高いとみられ、これらの人たちは健康な高齢者と比べ、1回目のワクチン接種後に感染する可能性がほぼ2倍になっていた。
結果には注意すべき点も
この調査は2020年12月8日~2021年7月4日、英国内で優勢な株の置き換わり(アルファ株からデルタ体へ)が進んでいた時期のデータに基づくものだ。そのため研究チームは、これによって確定的な結論を導き出すことは難しいとの見方を示している。
異なる株が流行の中心となっている地域には、これらの結果が当てはまらない可能性もあるほか、英国ではその他の国・地域と比べ、1回目と2回目の接種の期間が長く取られていることも、結果に影響を及ぼしている可能性があるという。
さらに、この調査は新型コロナウイルスの症状を研究するために開発されたスマートフォンアプリ「Zoe Covid Symptom study(ゾイ・コビッド・シンプトム・スタディ)」を通じて行われたものであることから、ユーザーが入力した情報が、正確ではなかった可能性もあるとしている。
ただ、研究チームはこの調査を、「接種後の感染の特徴を調べた最初の調査」であると説明しており、ブレイクスルー感染の特徴を捉えることができたと述べている。
ワクチンは1回の接種でも新型コロナウイルスに対する防御効果を提供すことが分かっている。だが、ブレイクスルー感染した場合の効果については、具体的には明らかされていない。
この調査結果は、米国などで感染者が急増する一方、入院・死亡する患者の大半が未接種の人である理由を解明する手掛かりとなりうる。また、デルタ株によってその有効性が低下したとしても、ワクチンが感染に対する最良の防御であることを、改めて示すものになったといえる。