気候変動に関するビル・ゲイツの新著が与える危機感と希望


原子力発電ならクリーンで安定的な供給が可能ですが、スリーマイル島やチェルノブイリ、福島の事故以来、世間から悪い印象を持たれるようになってしまいました。過去の全ての原子力事故を合わせた死者数よりも、石炭燃焼による汚染に起因する年間あたりの死者数のほうが多いことを考えると、非常に残念な状況だと言わざるを得ません。

セメントの製造による排出(石炭石に熱を加え、酸化カルシウムを生産する工程で二酸化炭素が排出される)も、製造自体の完全停止を除けば、現時点ではなくす手段がありません。

また、牛のゲップやおなら由来のメタンは、世界全体における温室効果ガスの年間排出量のうち4%を占めています。農業では家畜の排泄物も2番目に大きな排出源となっています。

移動に関しても、ディーゼル(軽油)を使ったトラックなら1回の給油で1600km以上走れますが、18輪の燃料電池トラックの場合、ディーゼルの35倍も重量があるバッテリーを乗せた上で、積載量を25%もカットしてようやく1000km弱ほど走れるに過ぎません。貨物船や飛行機への燃料電池の応用はさらに難しいのです。

このように気候変動対策には多くの課題がありますが、一方で、新しい課題は新しい機会にもつながります。いずれの分野でも、必要とされる革新的変化を実現するためには、今後は行政や民間、大企業やスタートアップなどがそれぞれ協力して取り組んでいかなければならないでしょう。

それに気候変動への取り組みは人類のためだけではなく、経済的にも大きな意義があります。これからはゼロカーボンの企業や産業を生み出すことに成功した国こそが、この先何十年と世界経済を牽引していくリーダー的存在になることが予想されます。

コロナ禍がはじまったばかりの頃に投資家のMarc Andreessen(マーク・アンドリーセン)氏が言ったように、あらゆる意味で、まさに「It’s time to build」(今こそが、作り始めるべきとき)なのです。

連載:VCのインサイト
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文=James Riney

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