後継ぎや職人ではなく、異質なバックグラウンドをもつ外部の人間が、伝統産業を取り入れる事業体に焦点を定めたのは、価値観の変化が影響しているかもしれない。とにかく便利に、とにかく手軽に、とにかく大量に、という高度経済成長から続いてきた拡大を主目的とする時代ではなく、ある程度、便利が揃いきった時代に育った若手たちだからこそ、自分たちが大事にしたい価値観をピュアに反映した伝統産業に心動かされたのではないだろうか。
デジタル上のマーケティング手法を活用することで、コストとリスクを抑えながら新たな挑戦ができるようになったことも、スタートアップとしての起業が増えた一因だろう。
盲目的に売り上げの拡大を狙うことと、一人でも多くに自分たちの大事にしたい価値観を届けて、その結果として売り上げが拡大することでは、その意味と深みは大きく異なる。強い思いをもった若手のクリエイターや起業家たちの活躍によって、さまざまな伝統産業が再び脚光を浴び、世界に浸透していく可能性があることは、明るい日本の未来を予感させられて、とてもワクワクする。
なかやま・りょうたろう◎マクアケ代表取締役社長。サイバーエージェントを経て2013年にマクアケを創業し、アタラシイものや体験の応援購入サービス「Makuake」をリリース。19年12月東証マザーズに上場した。