時代が追い風となり、NuZeeはハワイのライオンコーヒーなど小売り5社と受託製造販売契約を次々と結び、順調に売り上げを伸ばす。2019年には大手クラフト・ハインツ社傘下のジェバリア社と提携に漕ぎつけ、メジャーブランド「ジェバリア・カフェ」のプロダクトラインに乗せた。
「プラスチック製品を使用している大手コーヒーメーカーへの風当たりは益々強まっていく。プラスチックからドリップへ変える大手も出てくるはず」と、東田は言う。大手からの需要を見越して、製造規模を拡大するため、2020年11月に全米の飲食店・ホテル・オフィス向けにコーヒーなどの飲料を製造販売するファーマー・ブラザーズと製造提携を結ぶ。現在、複数の大手と交渉段階に入っているという。
ナスダック上場は通過点 世界進出へ向け始動
「ナスダック上場は、起業当初から頭に描いていたことだったのです」
東田にとって、ナスダックはリベンジの場だった。
30歳で起業した東田は、38歳で一度事業を手放している。さらに大きな目標を目指したいと思った東田は、次の起業は上場できる業種と決めていた。また、会社の出資者を前に熱弁をふるい、公言した「上場の約束」を反故にするわけにはいかなかった。2020年6月、50歳を目前にしてナスダック上場という快挙を成し遂げた。が、東田は「上場はあくまでも通過点でしかない」と至って冷静に受け止めている。「今は株主のために、業績を上げることだけを考えればよいので、より事業に集中できる」と言い、次なる目標である海外進出へ向けて始動する。
この年の1月に、メキシコの大手飲料メーカー「エル・マリノ社」と提携を結ぶ。中南米市場進出へ向け、一気に弾みをつける。さらに、世界市場への進出の可能性について、「インスタントコーヒー最大消費国ロシア、コーヒーの消費率が急増している中国、環境を重視した欧州も市場として期待できる」と、東田は意欲を示す。市場拡大を目指し、東田は、食品・流通業界屈指のスペシャリストたちをアドバイザーに招き入れ、マーケティングの強化に乗り出した。勝算について尋ねると、「見通しは明るい」と自信を見せた。
世界のスペシャルティコーヒー市場は、2026年までに825.7億ドル(約9兆501億円)に達すると予想されている。ドリップパックコーヒーの需要増も、当然期待できる。「成功とはまだ言えない」という東田が見据える先は、消費が拡大一途にある世界各地のコーヒー市場だ。東田が次に取る一手は何か。今後の展開に注目したい。