米国疾病予防管理センター(CDC)によると、現在米国では成人の10人に7人、子どもの10人に3人が過体重(overweight)または肥満(obesity)だという。今後さらに、肥満の割合は増加しており、2030年には米国成人の半数が肥満になると予測されている。また、現在の子どもの60%近くが、35歳までに肥満になるとみられる。
肥満は、糖尿病、心臓疾患、高血圧、胆嚢疾患、痛風、脳卒中、変形性関節症、睡眠時無呼吸症候群など、さまざまな併存疾患を引き起こす。肥満の蔓延を食い止めることを目的とした政策やプログラムの費用対効果を評価するためには、体重の増えすぎから生じる過剰医療費を正確に見積もることが不可欠だ。
医療費とBMIとの関係をより正確に把握するため、ウォード博士らは、医療費パネル調査で集められた、2011~2016年の医療費に関する17万5726人分のデータを分析した。
その結果、医療費は成人女性の方が男性より高く、さらに男女ともに、年齢とBMIに応じて増加していた。肥満(BMI30以上)の成人では、60~70歳代が最も医療費が高かった。最も医療費が低かったのは、BMIが20.5の女性と23.5の男性だった。
成人の肥満は、1人当たり年間1861ドルの過剰医療費と関連しており、米国全体での過剰医療費の年間総額は1700億ドルにのぼった。また、成人の高度肥満は、1人当たり年間3097ドルの過剰医療費と関連していた。
さらに、BMI値が25から30の過体重(overweight)とされる成人の過剰医療費(1人当たり600ドル以上)を加えた場合、米国全体の過剰医療費は、年間2000億ドル以上にのぼった。
子どもの場合は男女ともに、BMI値が99パーセンタイル(全体を100として小さい方から99番目の値)を超える場合にのみ、医療費が大幅に増加していた。子どもの肥満は、子ども1人当たり年間116ドル、総額13億2000万ドルの過剰医療費と関連していた。高度肥満の子どもの場合は、過剰医療費が1人当たり年間310ドルにのぼった。
研究チームは以下のように述べている。「子どもの肥満に伴う医療費は、過剰医療費に占める割合が比較的小さい(肥満関連の医療費全体の1%未満)。とはいえ、子どもの時の体重超過が、成人後の体重超過の強い予測因子であることを考えると、子どもの肥満を予防することは、将来の医療費を回避するのに役立つ可能性がある」
「これらの知見は、BMI分布全体にわたって健康的な体重を推進することの重要性を強調するものだ。そして、政策立案者や専門職従事者に対して、体重超過が医療費にもたらす影響に関する、年齢、性別、BMI分布別の、より正確な推定値を提供している」