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2021.04.13 16:00

HubSpot バイス・プレジデントが語る、世界9カ国のチームを完全リモートで率いるリーダーの思考

HubSpot インターナショナルマーケティング部門 ヴァイス・プレジデント スザーン・ロンクビスト・アマディ

2020年のパンデミックが、世界中に劇的な変化をもたらしたことは明らかだ。感染の恐れからこれまでのように限られた室内空間に多数が集まることはできなくなった。それはつまり、オフィス出勤を前提としたコミュニケーションや情報共有が不可能となることを意味した。企業は否応なしにリモートワークへのシフトを求められている。

顧客関係管理(CRM)プラットフォームサービスを提供するHubSpotは、このパンデミック以前からリモートワークフレンドリーな環境で運営されてきた。インターナショナルマーケティング部門ヴァイス・プレジデントのスザーン・ロンクビスト・アマディの働き方はその端緒な例と言えるだろう。

HubSpotが企業として拠点を置いていないスウェーデンに在住し、2018年の入社以来完全リモートの環境で米国外市場でのマーケティングを担うインターナショナルマーケティング部門をエネルギッシュに統括しているのだ。2020年の同社のQ4決算報告によると、米国外市場での売上高は過去6年間で実に57%もの年次平均成長率を見せ、創業地である米国以外での事業展開を今後さらに加速させることを予想させるものとなっている。リモート環境において、国も習慣も異なるチームをどのようにまとめ上げ、一体感を共有しているのか、そしてどのように業務を推進しているのか。リモートワークの成功の秘訣をアマディに尋ねた。


「相違」や「異例」を「プラス」と考えるポジティブ思考


HubSpotが拠点を置いていないスウェーデン在住のアマディが企業のインターナショナルマーケティング部門を統括する。アマディはこの大胆なビジネス戦略についてこう語る。

「私のポジションの募集要項は『世界のどこに住んでいても構わない』というものでした。適性があれば居住地は関係ない。HubSpotは、拠点がない国に私が居住しているという『違い』をプラスの価値と考えたのです。私の任務は米国外市場におけるマーケティング活動に責任をもつことと同時に、各地域にある異なる慣習や文化、ニュアンスを尊重することがいかにHubSpotにポジティブな影響を与えるかを認識し、それを企業全体として取り入れられるよう推進することです」

もちろん、リモートワークは、テクノロジーの進化があってこそ生まれた選択肢だ。近年までコミュニケーションをとるためにはオフィスに出勤するしかなかった。アマディもオフィス通勤のキャリアのほうが圧倒的に長い。

「20年を越えるキャリアの半分以上は通常の通勤生活を送っていたので、当時の体験は私のDNAに組み込まれています。その一方で、これまでも物理的に離れた場所にマネージャーが存在するという職場環境に身を置いてきたおかげで、リモートの利点も早くから体験していました。今回のパンデミックは世界を震撼させる危機ですが、技術が進化し、妥協のないリモートワークが可能となっているいまこそが、職場を『完全リモート』環境へと再構築するまたとない機会になると考えています」


2021年年初に実施したオンラインキックオフ会議で、投影用にアマディが作成したチームの集合図

リモートワークで持続的に成果を上げる秘訣は「正直でいること」


アマディが、世界中に散在するインターナショナルマーケティングチームを理解し、コミュニケーションを円滑に行うために心がけていることは、お互いの違いを「価値」と受け止めながら社員に居場所をつくり、絶対なる透明性と信頼をもって接することだという。これらはHubSpotの企業文化の根本でもある。

「チームごとの『違い』を『価値』と見なすことで、それぞれが安心して自分の能力を発揮する居場所をもてることが重要ですね。さらに重要なのは、常に正直であり、相手へ信頼を寄せること。例えば私はチームのメンバーとできるだけ定期的に1対1で話す機会を設けているのですが、そこではチームの課題として悩んでいることを私からメンバーに相談して意見をもらったり、マネージャー目線で考えているチームの将来の方向性に対して意識的にメンバーからのフィードバックをもらったりするようにしています。

これはメンバーにとっても、日常業務とは違う視点に触れるよい機会になるのではないかと思っています。そのようなコミュニケーションのなかで、私も失敗はするし、決して完璧ではないということを、包み隠さずに伝えるようにしています。それによりメンバーも問題が起きたり失敗したりしても隠さず打ち明けることができ、信頼関係が一層強まると考えています」

さらにアマディは、お互いが信頼関係のもとに率直にコミュニケーションを取ることは、持続可能な形でリモートワークを行い、成果をあげるためにも不可欠であると話す。

「私のチームメンバーはヨーロッパ、南米、また日本やオーストラリア、シンガポールといったアジア太平洋地域の各地に拠点を置いています。そしてHubSpotの本社は米国東海岸にあります。つまり密に連携すべき同僚たちが文字通り地球のあちこちにいるのです。グローバル企業で働くにあたってはお互いが相手の時差に配慮しながらコミュニケーションを取っていくことが必要ですが、ときには業務時間外の会議が続いてしまうこともあります。

あるとき私は、スウェーデン時間の朝7時からオーストラリアのマーケティングチームと打ち合わせをすることになっていました。ところがその前夜遅くまで米国本社との会議が続いてしまい、『このまま明朝7時の会議に参加しても、自分は最善の意思決定ができない』と考えました。そこで、前日ではありましたがオーストラリアチームのメンバーたちに自分の状況を打ち明け、会議の日程を変更してもらいました。

リモートワークだとどうしてもお互いの状況が見えづらく、無理な働き方をしている人に周囲が気づきにくいことがあります。そこで、物理的に離れた環境でチームとして持続的に成果を出すためには柔軟性も必要であり、各自がチームに対してそういった相談を投げかけられるのだということを私自身が率先して示したいと思っています」

顧客から価値を受け取る前に、価値を提供する


アマディのこうしたリーダーシップのスタイルは、HubSpotが提唱する「インバウンド」の思想(相手から価値を受け取る前にこちらから価値を提供する)にも共通している。HubSpotの事業がグローバル市場へと拡大し、これまでより事業規模が大きな企業も含む多様な相手に向けたマーケティングが求められるようになるなかで、アマディはこの哲学をより意識するようになったという。

「相手にとって有益な情報が提供できない段階で、営業電話で一方的に情報収集をするといった、こちらからは何も価値を提供していないうちに顧客から『価値』を受け取るようなことはするべきではない、と考えています。

HubSpotから提供する『価値』とは、私たちマーケティング部門においては受け手の方がビジネスへの示唆を得られるような情報です。例えば日本ではマーケティングや営業、カスタマーサービスやイベント運営など多岐にわたる分野のノウハウを紹介するオンライン資料(eBook)を200種類弱公開し、興味のある方が無料でダウンロードできるようにしています。

また時勢に応じた世の中のニーズに応えるため、HubSpotの顧客によるソフトウェア利用データを完全に匿名化し、世界のマーケティングと営業活動のトレンドを閲覧できる『COVID-19のベンチマークデータ』を公開したり、HubSpot日本法人が年次で実施する日本の営業の実態調査の結果データを公開したりしています。こうした『価値』を先に提供したからといって、見返りは約束されてはいませんが、まずは我々から、という順序を大切にしたいのです。価値を感じてくださったお客様からお問い合わせをいただき、実際に顧客になられた例は枚挙にいとまがありません」


HubSpotの東京オフィス

パンデミックを受け、さらにリモートワーク環境を改善


20年半ばより、HubSpotは働く場所にかかわらず、成果を上げキャリア構築できる環境の強化を目指し、「リモートワークとオフィス出社のハイブリッドモデル」へと移行を決めた。社員はオフィス勤務週3日以上、オフィス勤務週2日以下、または自宅などHubSpotが承認する場所でのリモートワーク、の3種類から自分に最も適した働き方を選び、それぞれの選択に沿った環境整備の支援を受けることができる。

「これまで誰もが仕事とプライベートをいかに両立させるか、を試行錯誤してきました。私はHubSpotのインターナショナルマーケティング部門のヴァイス・プレジデントであると同時に母であり、家族との時間をできる限り大切にしたいと考えています。完全リモートワークの環境だと、通勤・出張時間がなくなり日々息子のそばにいることができます。確かにリモートワークは社員とフィジカルに接する場所がないのですが、同時に国境を超えてチームのメンバーと日常的につながることができるとも言えます。HubSpotは、どんな逆境に晒されても、ポジティブな効果を最大限につくり出せるように常に進化を遂げている点が強みだと感じています」

さらに特記すべきは、HubSpotの製品であるCRMプラットフォームがあるからこそ、社員全員が全データや情報を共有し、これほどにフレキシブルな働き方が可能となる、という点だ。自社製品を活用することで4,000人を超える社員がどこにいても共同作業できる。

「HubSpotの社員にこのようなハイブリッドな選択肢があるのは、HubSpotのCRMプラットフォームのおかげとも言えます。拠点に縛られずに同じ情報にアクセスすることができるので、私自身がそうであるように所在地に縛られることなく最適な人材を採用することもできます。コロナが終息したのちも、引き続きフレキシブルな勤務環境をつくり続けることが社員にとってベストなのだと考えています」

セミプロ総合格闘家というもうひとつの顔


人の才能はひとつだけに限らない。時間のコントロールがしやすいリモートワーク環境は、仕事とは別の才能を伸ばし、趣味を極める時間もつくりやすくしてくれる。そしてそれは企業の「プラス」へと転換される。20年以上総合格闘技のセミプロとして活動を続けるアマディはその最たる例といっても過言ではない。

「インターネットがなかった12歳のころ、イエローページをめくるうちに、家の近くにテコンドー・クラブがあると知り、テコンドーが何なのかもよくわからずに訪問したのがすべての始まりです。『闘う』スポーツと出合い、『これだ!』と(笑)。次第にキックボクシングやムエタイにも取り組むようになり、大会でも連勝していました。そんな縁から、総合格闘技の団体からPRの仕事のお誘いを受けたこともありました。そのときは本業との両立が難しかったため、回数が限られたセレモニー試合のMCを務めました。

仕事ではPCの前、それ以外は家族と共に過ごす、となりがちな生活のなかで、格闘技は心身ともに自分だけのスペースをつくってくれる大切な存在です。体を動かすエクササイズという意味も含め、格闘技がもたらす経験は仕事と自分自身のバランスを保つための秘訣と言えますね」

格闘技とキャリアはまったく対照的に思えるが、格闘技で得た経験がいかに仕事で役に立っているか、アマディは語る。

「試合では常に攻撃を受ける可能性に晒されており、一瞬たりとも気を許せません。リングに立っている間は集中力を最高の状態まで高めて、瞬間ごとに何をすべきかを判断し、同時に相手の動きも読み取らなければなりません。これは、どんなにプレッシャーに追い詰められた状況下にも耐える強さを身につけることにつながりました。おかげで困難に遭っても萎縮したり不安になったりしません。HubSpotでは素晴らしいエキスパートたちに支えられているので、孤独に闘う格闘技の試合とは異なる、恵まれた環境ですけどね」

多くの企業で社員同士の交流を目的としたアクティビティとして、ヨガや料理レッスンなどが行われているが、HubSpotのインターナショナルマーケティング部門ではアマディによるシャドウ・ボクシングのレッスンをオンライン開催したこともあるとか。アマディの個性と彼女のもうひとつの才能が結果的にHubSpotならではのチームビルディングにつながっている。

「メンバーそれぞれが、テクノミュージックに合わせてシャドウボクシングする姿がスクリーン上に写し出されると感動しますね。時差も国境も超えてポジティブなエネルギーをチーム全員とともに築き上げていると思えます。格闘技はオフィス環境では使用しませんが(笑)。シャドウ・ボクシングはみなさんにもおすすめです」

最後にそう締めくくったアマディの笑顔が印象的だった。


スザーン・ロンクビスト・アマディ(Susanne Rönnqvist Ahmadi)◎HubSpot インターナショナルマーケティング部門 ヴァイス・プレジデント。ProjectplaceやKlarnaをはじめとするテクノロジー企業で20年以上のマーケティングおよびリーダーシップの経験をもつ。2018年1月よりHubSpotに参画し、米国市場以外でのマーケティングを担うインターナショナルマーケティング部門を統括。HubSpotが企業として拠点を置いていないスウェーデン在住で完全リモートワークで働くアマディは、プライベートでは20年以上総合格闘技のセミプロフェッショナルとしても活動している。

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Promoted by Hubspot 文=稲村美樹 編集=高城昭夫

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