検査が簡単にできない日本 課題は山積
さらに検査で陰性を証明できれば自己隔離免除とは言っても、日本では検査自体が簡単にできないことも課題のひとつだ。日本では新型コロナウイルス感染症の検査は、発熱などの症状が出ており、しかも医師が必要と判断した場合に限り受けることができる。つまりハワイに行く目的で、陰性を証明するために検査を受ける体制が現段階では整っていないということだ。
また仮に検査を受けてハワイに行けたとしても、日本に帰国した後もスムーズにはいかない。日本では6月、ベトナムとタイ、オーストラリア、ニュージーランドの4カ国について出入国制限を緩和することを発表したが、それ以外の国から日本に入国した人については、全員にPCR検査が実施され検疫の対象となる。検疫では検査結果が出るまで数時間から1~2日程度待機することが求められる。さらに検査結果が出て陰性となっても、入国から14日間は不要不急の外出を避け自宅などで待機することが要請され、出勤や日常生活にも支障が出ると予想できる。
つまり、ハワイ州が事前検査プログラムの開始を決定したが、日本人が自由にハワイに旅行に行けるようになるためには、まだいくつものハードルがあるということだ。
安全にハワイを楽しめる日はいつ来るだろうか。(Photo by Unsplash)
7月中の訪問者には検査を行わない「矛盾」
さらに現地在住者の間では、現在ハワイを訪れている観光客に対する対応に疑問が湧いている。事前検査プログラムは8月1日から開始されるため、7月中にハワイを訪れる観光客は、これまでと同様に14日間の自己隔離が義務付けられている。日本からの直行便はすべて運休しているが、アメリカ本土とハワイを結ぶ航空便は一部運航しており、少数だが毎日ハワイには観光客が到着している。
そして、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、追跡アプリなど隔離を管理する制度がない現状では、その全員が14日間の隔離を守っているかは疑問だ。現地では、いかにも観光旅行を楽しんでいると思われる人を時折見かけるが、彼らがはたして本当にホテルなどの滞在先で14日間過ごした後、観光やショッピングに出かけているのだろうか。これまで、隔離措置を守らず観光客が逮捕されたケースはあるが、すべての観光客に対して管理しきれていないのが現状だろう。それならば、事前検査プログラムを8月まで待たず7月からでも開始するべきという見方もできる。
ちなみに5月にハワイを訪れた訪問者数は、9116人。84万1376人だった2019年に対して、実に98.9%のマイナスだが、それでも一日平均で300人ほどの訪問者がいることになる。ハワイの観光業を再開し、地元経済を動かしていくためには、現地での感染抑制は絶対条件。そのためには、事前検査プログラムを一日でも早く開始することが求められるかもしれない。
ハワイにとって日本は、毎年数多くの観光客が訪れている大切な国のひとつだ。その日本から観光客を受け入れられるよう、ハワイ州政府やハワイ州観光局などが、日本に対してさまざまな働きかけを行っているものとみられる。
日本人観光客がハワイを訪問できるようになる日を切望する人は、決して少なくないはずだ。