研究チームが焦点を当てたのは、エピジェネティックな変化だ。エピジェネティックな変化とは、遺伝子発現を変化させるような、遺伝子に対する環境の影響(このケースでは、コーヒーやお茶を飲むことの影響)を意味する。
この研究では、合計1万5800人近いヨーロッパ人とアフリカ系米国人の流れをくむ人を調べ、コーヒーやお茶の摂取に関する複数の「エピゲノム・ワイド関連解析(EWAS)」を検証した。さまざまな背景をもつ人々を集団的にカバーする15件のエピジェネティック研究の結果を含めて、1万5800人分を分析したことになる。
「この研究の最大の強みは、サンプル数の多さと、多くの民族が結果に寄与していることだ」と研究チームは書いている。
研究チームは、「熱々のコーヒーの摂取」以外の、ヒトの遺伝子に影響を与える可能性がある要因をコントロールすることで、コーヒーとお茶の摂取に固有のエピジェネティックな関連性を探った。その結果、一部の疾患のリスク低下をうかがわせるいくつかの有意な関連性が見つかった。なかでも重要なのが、肝疾患と心疾患だ。
コーヒーに含まれる化合物が遺伝子に影響を及ぼすプロセスは、「DNAメチル化」と呼ばれる。このプロセスの解明が進むにつれて、エピジェネティックな変化のコントロールが鍵を握ると見られる疾患や障害の数がますます増えている。
こうした結果が得られたのは、今回の研究が最初ではない。以前の研究では、コーヒーがやはりメチル化を通じて、壊れたDNA鎖を「修復」し、DNA鎖全体を強化して壊れにくくしている可能性まで指摘されている。そうした作用により、アルツハイマー病から2型糖尿病、パーキンソン病までのありとあらゆる疾患に関連する遺伝子の発現に影響を与えている可能性がある。
これは良いニュースだが、この知見はまだ予備的なもので、複数の要因のあいだにある関連性の観察にもとづいており、因果関係そのものを示しているわけではない。とはいえ、少しはそれに近づいていると言えそうだ。