コーヒー豆の多様性を保ちつつ、生産者の経済的基盤を強化し持続可能な仕組みを作ることが必要不可欠だ。
それを解決するためには生産者とロースター(焙煎所)を直接つなぐダイレクトトレードが有効と言われている。しかし現在の物流の仕組みでは、小規模な生産者とロースターがダイレクトトレードを行うことは困難だった。
その課題を解決するため、オランダへと移住してきた女性がいる。「TYPICA(ティピカ)」代表の山田彩音だ。
海外の生産者と日本のロースターをつなぐ
「TYPICA」は2019年11月にオランダ・アムステルダムで創業したコーヒー生豆のプラットフォーム事業。サイトからただコーヒー生豆を注文するだけではなく、精製方法や品種、標高、周辺環境などのデータや、生産者の想いやビジョン、サステナビリティに向けての取り組みなど詳細な情報を掲載。
サイト上には、メッセージやビデオチャット機能を搭載予定。現地生産者と日本のロースターを直接つなぎフィードバックを容易にすることでコーヒーの品質を向上させ、価格と生産性も高めることを目指す。
カッピングイベントの様子
3月9日からは全国7都市でカッピングイベントを実施。収穫したばかりのコーヒーを試飲できるだけでなく、現地の生産者とビデオをつなぎお互いの様子を中継。急激な技術発展が進むアフリカのインフラは私たちが思う以上に整っており、生産地のマネジメントクラスであれば問題なく中継ができる。
アムステルダムに拠点を構える理由
なぜ山田はコーヒー豆の原産地ではなく、オランダの地を移住先として選んだのだろうか。
ひとつは、オランダはビザの取得しやすい国ということがある。一時期、多くの日本人フリーランスが移住を試みた。ワークライフバランス先進国と呼ばれ、美しい街並みと寛容な文化が特徴の国だ。この文章を書いている私自身も、アムステルダムを拠点に活動している。
山田がアムステルダムを拠点に選んだもうひとつの理由は、生産地であるアフリカや中南米へのアクセスの良さ。日本と比較して、時間も航空券代も3分の1ほどで済む。さらにオランダはサステナビリティとテクノロジーの領域において先進国。良質なインプットが得られるのではという期待もあった。
山田が暮らす家。生活を非常に重視するオランダは、居心地の良い素敵な物件が多い