米国の住宅ローン借り換え申請が急増、新型コロナウイルス余波

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新型コロナウイルスの感染拡大を受け、米連邦準備理事会(FRB)は2020年3月3日、緊急の利下げを実施した。これを受けて、米国では住宅ローンの借り換えを申請する人が急増している。

新型コロナウイルスの影響で、不動産業者がショールームに客を招いて住宅を売り込む光景はすでに変化した(ショールームを閉鎖した業者もある)。さらに、ローンの貸し手たちは、突然の危機感に煽られた購入者たちから、手続きを早めるよう迫られるというプレッシャーを受けている。

こうしたエピソード的な兆候がついに、具体的な数字として現れた。米抵当銀行協会(MBA)の発表によれば、ローンの借り換え申請は、3月1週目と比べて79%も急増したという。対前年比では479%増になる。

借り換え申請は、3月1週目には申請全体の66.2%だったが、3月2週目は76.5%にまで増加した。1週間でこれほど急増したのは、住宅価格が下落して底を打った時期とされる2008年11月以来だ。借り換え申請の数は、住宅価格が回復途中にあった2009年4月以来、最も増えている。

住宅の購入申込みは、それよりも控えめな動きを見せており、前週と比べて6%増に留まった(対前年比では12%の増加)。購入者は、短期的な経済の健全性について不安を覚えながらも、できるだけ低金利でローンを確定したいという思いをうまくコントロールしなくてはならない。とりわけ配慮すべきなのは、近いうちに雇用主が従業員に無給休暇を取らせるようになった場合の賃金カットだ。

現在、コンフォーミング・ローン(政府が支援する連邦住宅金融抵当公庫などの貸出基準に合致するローン)の30年固定金利は3.47%だ(購入額の20%を頭金にして、51万400ドル以下の場合)。この金利は過去最低だが、2012年12月にも同じレベルだった。

ローン残高が51万400ドル以上(融資額が大きいジャンボローン)で、頭金を20%支払った場合の30年固定金利は3.58%に低下した。この数字も、2011年にジャンボローンが独立したカテゴリーに指定されたとき以来の最低レベルだ。

借り換えローン申請が急増したことで、抵当銀行協会は、2020年の借り換えローン創出(オリジネーション)予測を1兆2000億ドルに見直した。これは、当初予測のほぼ倍だ。

抵当銀行協会の経済・産業見通し担当アソシエート・バイスプレジデント、ジョエル・カン(Joel Kan)は、声明で次のように述べた。「貸し手が、大量に寄せられる申請を処理し、キャパシティを管理するので、住宅ローン金利は安定する見通しだが、当面は低金利が続くだろう。そのことが、この春に住宅ローンを借り換えたり、住宅を購入したりする借り手を支えることになる」

利下げ後の1週間で申請が増えたほかの住宅ローンは、退役軍人省(VA)が保証するVA住宅ローンだけだ。申請全体に占める割合は、10.5%から13.1%に上昇した。

一方、連邦住宅管理局(FHA)ローン(ローン取得条件に満たない人のために政府が保証人になるローン)の申請は、9.3%から6.9%に減少した。

低金利によって、一部の購入者の購買力が増し、FHA以外のローンに手が届くようになった可能性がある。あるいは、FHAを検討していた人が、新型コロナウイルスの影響で経済がどう変化するかを見守るため、ローン申請を差し控えた可能性もある。

いずれにせよ、ローンを借り換えるならいまだ。

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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