テクノロジー

2020.03.16 13:00

イスラエルが中国に匹敵するデジタル監視体制で感染阻止へ

Photo by Mostafa Alkharouf/Anadolu Agency via Getty Images

Photo by Mostafa Alkharouf/Anadolu Agency via Getty Images

イスラエルのベンジャミン・ネタニヤフ首相は3月14日、「新型コロナウイルスの感染拡大阻止に向け、あらゆる手段を講じていく」と宣言し、「これまで市民社会への適用を控えてきたテクノロジーやデジタル技術の利用も検討していく」と述べた。

現地メディアのハアレツ(Haaretz)はこの発言が、イスラエル政府が今後、従来はテロ防止に用いてきたサイバーテクノロジーを、人々の隔離や、感染者の追跡に用いることを意味すると報道した。

ネタニヤフの宣言を受け、イスラエルの司法長官は感染者のスマートフォンの追跡に、サイバー技術を用いることを承認し、公安警察的組織であるシンベト(Shin Bet)が、位置情報により感染者の行動を追跡することが合法化された。これにより、感染者のリアルタイムの位置情報データベースの作成が可能になる。

この技術を用いれば、感染者の周囲に居る人物を把握し、感染リスクを知ることが可能になる。ただし、この施策の実施に向けた正式なアナウンスはなされていない。

中国やイランは感染拡大防止に向けて、国家レベルの監視体制を敷いたが、イスラエルにおいてもそれらの国と同等な施策が可能になりそうだ。感染者の位置情報と、医療機関から得られたデータを組み合わせることで、データのマッピングも可能になる。

ネタニヤフは、デジタル技術の活用によって、「国全体を隔離せずとも、ホットスポットを見つけ出し効率的な対策をとることが可能になる」と述べた。

ハアレツの記事によると、シンベトの高官はデジタルツールで感染者の監視を行うことはないと述べたが、「感染者と関わりを持ったとみなされる人」については言及していない。

他の諸国もサイバー監視技術を感染者の追跡に用いている。イランのセキュリティ研究者のNariman Gharibは3月7日、イラン政府が国民にインストールを求めたアプリについて言及した。このアプリは、診断を補助するものだとされたが、実際は端末の位置情報や連絡先リストを収集するものだった。グーグルはその2日後にこのアプリをストアから削除していた。

セキュリティ企業Avastの研究員は、問題のアプリが位置情報だけでなく、電話番号や性別、氏名、身長や体重などを外部のサーバーに送信する機能を持っていたと述べた。このアプリの開発にはロシアのメッセージアプリ、テレグラムの開発者が関わっていたという。

コロナ監視の先進国、中国に続く?


新型コロナウイルスの感染防止拡大に向けて、最も先進的なデジタルツールを導入したのは中国だ。中国政府はスマホの位置情報に顔認証データを組み合わせ、一部の地域ではドローンが空から、感染者に外出しないよう呼びかけた。

中国では地下鉄やモールなどの施設もデータ収集に活用され、人々の行動履歴が詳細に把握可能にされた。

これらの措置は、一般的な西側諸国では受け入れ難いものに思えるが、事態の深刻さを考えるとやむを得ないものなのかもしれない。強制的な隔離や国境の閉鎖が相次ぐなかで、デジタル技術を活用した人々の監視が、広まっても決して不思議ではない。

現状では、これほど厳格な措置がとられるのは一部の国にとどまっている。しかし、今後の状況次第では、同様な措置が他の国で進むことも十分考えられる。

編集=上田裕資

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