「A Leaderless Struggle for Democracy(リーダー不在で民主主義を求める戦い)」と題された報告書の内容は、悲観的だ。「民主主義と多元主義が攻撃にさらされている」と主張し、「独裁者たちは、異なる意見を持つ国民を、ひとり残らず徹底的に根絶し、悪影響を世界のほかの地域へと広めている」と述べている。
さらには、自由選挙によって選ばれた指導者たちの多くが、「国益を非常に狭い視野で解釈し、自らの関心を狭めてしまっている」という事実についても警鐘を鳴らしている。
フリーダム・ハウスによると、そうした状況を受けて、世界の自由度は2019年まで14年連続で低下したという。64カ国で政治的権利と自由度が悪化し、改善が見られたのは37カ国にとどまった。
中国やロシアなどの国々で自由度が低下しているのは驚くにあたらないが、「民主主義が確立された」41カ国中、25カ国でも、2006年以降に民主主義が純粋に失われていると、フリーダム・ハウスは明らかにした。アメリカの自由度は、10年前はスイスやイギリスと同レベルだったが、現在はギリシャやスロバキアよりも低く、アルゼンチンやクロアチアをかろうじて上回るレベルだ。
自由度が低下した主要因はドナルド・トランプ大統領だ。トランプ政権は、民主主義ならびに人権の原則にもとづいた外交政策に一貫して取り組もうとする姿勢を見せていない。
今回の年次報告書はトランプ大統領について、アメリカと敵対するベネズエラやイランなどの国々による権威主義の乱用を公然と非難する一方で、安全保障をめぐって以前から協力関係にあるエジプトやトルコといった国々の侵害については大目に見ていると指摘した。
トランプ大統領はまた、ロシアのウラジーミル・プーチンや北朝鮮の金正恩など、外交的な説得を試みた専制的リーダーに対して、行動を起こすことも、非難することもしていない。さらには、イエメンで大規模な空爆を行っているサウジアラビアへの武器販売と軍事支援に歯止めをかけようとする超党派連邦議員の取り組みに拒否権を発動した。
2019年度の報告書では、世界で最も高い自由度を誇る国々と評されたのはフィンランド、ノルウェー、スウェーデンだった。また、オランダ、カナダ、アイルランド、オーストラリア、ニュージーランドも上位に入っている。
「自由がない(not free)」と分類されたのは49カ国で、最下位はシリアだった。自由度が低い国にはほかに、トルクメニスタン、エリトリア、北朝鮮、ソマリアが並んでいる。
2019年度の国・地域別自由度
上位5カ国・地域
1位 フィンランド
1位 ノルウェー
1位 スウェーデン
2位 オランダ
3位 ルクセンブルクほか2カ国
下位5カ国・地域
1位 シリア
2位 チベット
3位 トルクメニスタン
3位 エリトリア
3位 南スーダン