そこで注目されているのが、人工知能(AI)の存在だ。今回、スタンフォード大学のStefano Ermon教授、William Chueh教授ら研究チームが、従来のテスト時間を98%(通常2年かかるテスト過程を16日)も短縮できるAIベースの「Closed-Loop Optimization」という新技術を開発した。
バッテリーの寿命を最大化しつつ最良の充電方法を発見できる同研究および技術の開発は、スタンフォード大学に加え、トヨタ研究所(TRI)、米国立科学財団(National Science Foundation)、米合衆国エネルギー省(U.S. Department of Energy)、マイクロソフトなどの支援を受けている。
今回の研究では、可能だと考えられるすべてのテストを万遍なく試したり、エンジニアの直感に依存する代わりに、人工知能を使って効率的な方法を割り出すことでテストプロセスの大幅な削減に成功した。
Ermon教授は、テストプロセスの速度を早めるだけでなく、バッテリー科学者たちが考案した方法より人工知能の解決策がより効果的だったと強調。今後、バッテリーの科学的性質を設計する作業から始まり、その大きさや形、また製造や電気の貯蔵のためのより良いシステムの模索などに、開発されたAI技術を用いることができるようになるだろうとしている。
なお研究チームは、今回の研究で開発されたAIモデルとデータ収集システムを将来的に開放して、バッテリー開発者たちが自由に使えるようにしていきたいとしている。
新薬開発の現場ではすでに、原料の発見や組み合わせ、製造プロセスの最適化のために人工知能が採用されて久しい。また今回、バッテリー開発やエネルギー効率の最適化にAIが寄与するということがひとつ証明された形だ。今後もテストに膨大なコストがかかる職種や製品開発の現場では人工知能が重宝されていくかもしれない。
連載:AI通信「こんなとこにも人工知能」
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