経済・社会

2020.01.14 16:00

GAFA的「超効率国家」が未来を救う 元アマゾンジャパン・シニアエコノミストの東大教授

渡辺安虎 東京大学大学院経済学部教授(撮影=Irwin Wong)


そのような統計データではなく、私たちが役所と関わる際に発生するさまざまな「行政データ」を使えるようにしていくことがEBPM推進の鍵だ。引っ越し、結婚・離婚から教育、納税、医療、年金、介護、犯罪など行政に溜まったミクロデータを統合して分析し、政策立案に生かす取り組みは、デンマークなど一部の国で始まっている。日本では行政データはそれぞれの部署や機関で独立して保管されており、個人にひもづけて複数を分析できない。行政データを研究者にどこまで開放するか、という問題もある。
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行政データには個人のセンシティブなプライバシー情報が含まれる。そのようなデータの利活用に対する懸念はもっともだ。匿名化して一般公開されたビッグデータでも、複数の属性を組み合わせることで個人が特定できてしまった、という研究報告もあった。

しかし、匿名化の技術進歩も目覚ましい。例えば、個人が特定される個別情報だけ情報の精度を粗くするk-匿名化や、意図的にデータにノイズを入れる差分プライバシーといった技術も開発されている。もちろんリスクがゼロになることはないが、だからといって行政データを使わないのは宝の持ち腐れだ。行政データを活用できれば政策の効果測定の制度は格段に上がり、効果的で無駄の少ない政策を実施できる。

「GAFAのような未来」と聞くと、データサイエンティストが魔法のように10%、20%と劇的な効果のある施策を行うイメージかもしれない。だが、実際はもっと小さい、1%にも満たないほどの小さな数字の改善の積み重ねだ。そのような小さな違いだからこそ、ビッグデータを解析する必要があるともいえる。ミクロの「カイゼン」を続ける仕組みをつくることが重要だ。
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将来の課題が山積みの日本で、魔法のような解決策はどこにもない。高齢化が進み社会保障費が大きく積み上がり、それを賄うために税率が上がる。働く世代を圧迫し、生活レベルも上がりにくい。なんとも暗い未来だが、そんななか少しでも明るさを感じられるのは、データを駆使したGAFA的な国家ではなかろうか。


わたなべ・やすとら◎東京大学大学院経済学研究科および公共政策大学院教授。1998年、東京大学経済学部卒。ペンシルバニア大学博士号取得後、ノースウェスタン大学、香港科技大学などを経て、2017年にアマゾンジャパン合同会社へ。専門は実証ミクロ経済学(産業組織論、政治経済学、法と経済学)と計量マーケティング。

写真=Irwing Wong 構成=成相通子

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