提供されるのは、ヘルシンキ大学で考案されたAI教育プログラム「Elements of AI」だ。これは無料のオンライン講座で合計30時間のカリキュラムだ。「AIとは何か」「AIアルゴリズムによる問題解決」「機械学習」「ニューラルネットワーク」「AIが社会におよぼす影響」など、基本的な概念理解から技術面、また社会学的な内容で構成されている。
PCとタブレット、スマートフォンで受講が可能であり、修了証明書はヘルシンキ大学から発行される。すでに英語、フィンランド語、スウェーデン語、エストニア語などで受講可能だが、フィンランド雇用経済部が約167万9000ユーロ(約2億円)を支援し、他のEU公用語にも翻訳を進め、2020〜2021年の間に提供していく計画だとされている。
なおフィンランドは2018年に、自国民の人口1%(約5500人)を対象に同様のAI教育プログラムを実施するとして話題になったことがある。この目標はわずか数カ月で達成され好評を得た。現在では、フィンランドをはじめ約110カ国、22万人以上が受講申請を行うなど引き続き大きな反響を得ている。
フィンランド雇用経済部長官のTimo Harakka氏は、メディア取材に対し、EUおよびフィンランドにとって優先課題のひとつとなっている「デジタル能力開発」の具体的な足跡を残すために尽力したいと言及。また、EU市民がAIについて実用的な理解を高めることが、欧州のデジタルリーダーシップを強化するための力になると指摘している。
なお、EU離脱に向かって進む英国でも、人工知能に対する投資が増加しているとの統計がある。起業家支援を行う英団体Tech Nationによれば、2018年の英国内AI投資は10億2100万ドルを記録。2014年比で6倍増加した。2019年には上半期だけで10億6300万ドルとなっており、これは米国、中国に次ぐ世界第3位の数字となっている。
人工知能への投資・教育に関しては、ここ数年、中国や米国のそれが世界的に注目されてきた感がある。今後、欧州の巻き返しが本格化するか注目したい。
連載:AI通信「こんなとこにも人工知能」
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