ここでも地元民は人懐っこい。「俺のバンドも見ろ」とライブ予定を教えてくれたり、酒を奢ってくれたり。聞けば、地元民向けのライブは毎晩各所で開催されているが、予定はだいたいクチコミ。昼間のカフェでBGMに反応するだけで、「いいライブがある」といきなり話しかけられることもある。
観光客が行きやすい最高のライブ会場は夜の教会だ。大きめの教会にはフルバンドが揃っており、ゴスペルらしきものがラテン調で演奏される。歌の際には聖堂中が立ち上がってのダンス、説法では熱すぎるコール&レスポンス。もちろんここでも、覗き込めば誰かが間違いなく手招きしてくれる。
テスト7: LGBTからキューバ史を学べ
マレコン通りや革命博物館、数々の要塞、チェ・ゲバラ邸など、ハバナ市内には観光スポットが多い。それでも、車を貸し切れば2日ほどで回れてしまうため、一部の観光客はトリニダやサンタ・クララ、サンティアゴ・デ・キューバなどの地方都市へ移動する。
とはいえ、ハバナは夜も魅力的だ。街灯が灯る旧市街の幻想的なムードはもちろん、新市街方面には個性的なクラブもある。そこで「Airbnb」を活用してみよう。検索すれば、ナイトクラビングを扱う多数のプチツアーが表示される。
なかでも特筆すべきは、ドラァグクイーンと対面できる「Into Queer Havana」だが、これは単なるショー見物ツアーではない。主催は地元のLGBTアクティビストで、最初の1時間ほどはキューバのLGBT史と現状についての深いレクチャーが行われる。
性転換手術の無料化やプライドの開催に続き、2019年には同性婚が合法化されたキューバは、いまや「LGBT先進国」になりつつある。この動きを推し進めている人物は、フィデル・カストロの弟ラウルを父に持つマリエラ・カストロ。革命指導者の血を引く人物がLGBTの世界でも革命を起こしているとは、非常に興味深い。
「Into Queer Havana」のレクチャーでは、マリエラの活動やネットの普及によってLGBTの連携が進んだ状況などをつぶさに知ることができる。新たな面からキューバ史を知りたいなら迷いなく行くべきだろう。ただし、催行は月に数回&定員5人とあって、予約は激戦。幸運を祈る。
テスト8:これまでの運は本物なのか
以上のエピソードについて「運が良かっただけでは?」と思う人もいるだろう。確かにそうかもしれないが、これこそがキューバを訪れるべき最大の理由でもある。これまでの人生、持っていると思っていたあなたの運は果たして本物なのか。
これまでの人生、うまくやってきた自負はある。だが、何かが足りない、と思う瞬間もある。知らずに身にまとってきた「鎧」のようなものが、やけに重く感じられる──。そんなとき、キューバはとても「効く」。築いたものが破壊されるわけではない。むしろ、それらが本物であったのかを、数々の経験を通じて確認すれば、まだまだ先へ行ける自信が生まれるだろう。
イデオロギーに関する論議はさておき、革命で生まれた国は、旅人の内側にも静かな革命を起こしてくれる。
日本の大人たちよ、キューバを目指せ。
連載:世界カルチャー見学
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