新薬を21日間で設計可能にするAIスタートアップの実力

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複数のバイオテクノロジー企業と提携

投資家には、A-Level CapitalやJuvenescenceが含まれる。同社はまた、A2A PharmaceuticalsやTARA Biosystemsをはじめ、バイオテクノロジー業界の複数の企業と提携している。

Insilicoが今回発表したレポートは、バイオベンチャー企業「ジェネンテック」からの依頼がベースとなっている。ジェネンテックは、Insilicoのシステムを使ってDDR1(ジスコイジンドメイン受容体1)の活動を抑止する薬の設計を依頼した。

DDR1は線維症に関連する酵素で、線維症のプロセスを制御するかは不明なものの、活動を抑止することで線維症の治療につながる可能性が指摘されている。ジェネンテックが最近公表したレポートによると、同社は有望なDDR1キナーゼ阻害剤を発見したが、それには8年もの期間を要したという。

InsilicoはGENTRLを使って新薬の候補を設計・合成し、その中でも有望なものはマウスを使ったテストに成功した。AIは分子設計に21日、設計から合成、検証までに46日を要した。

GENTRLが設計した新薬は、従来の手法で設計された阻害剤と同等のものという。しかし、従来の手法では8年間以上の期間と数百万ドルもの資金を要するのに対し、Insilicoの手法では数週間の期間と15万ドルほどで開発することが可能だ。

「ジェネンテックの分子設計は素晴らしく、我々のAIが開発したものよりやや優れている。しかし、彼らが何年もかけて達成した成果を、我々のような化学の知識があまりないチームが、短期間で生み出した」とZhavoronkovは話す。

もちろん、これは創薬の最初のステップに過ぎない。AIが新薬候補を特定する能力を示す大きなマイルストーンを彼らは達成したが、薬が承認されるまでには何年間もの臨床試験や数百万ドルの調査費が必要だ。

Zhavoronkovも、Insilicoにはまだ成し遂げなければならないことが多くあることを理解している。しかし、創薬におけるAIの活用が有望であることを証明できたことは、偉大な前進だ。

編集=上田裕資

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