この事実を受けて、後藤は知人から金融機関の社長を紹介してもらい、ペイミーのどこに課題があるのかを聞く面談の機会を得た。その場に、後藤はいつものようにTシャツ姿で出席した。すると、約1時間程度の話し合いの中で、ある指摘を受けたという。
「後藤君、金融業界でやっていくなら、タイを締めたほうが良い」
この時、後藤はハッとした。これまでは、「スタートアップ村の若手起業家」として壮大なミッションを掲げ、自分たちのビジネスの必要性を訴えることに終始していた。しかし、ペイミーがやろうとしているのは、金融、それも給与という人々の生活の根幹を支える領域での挑戦だ。まずは相手の立場に立って、誠意ある態度を示さねば、自身の持つ想いや覚悟は伝わらず、到底、理解は得られない。会うことができる人物も、今のままでは限られる。その面談は、後藤にとって、初めて自身の立ち振る舞いや、服装について見つめ直す機会となった。そして、その日以来、重要な場ではタイを締めることに決めたのだ。
取材当日、彼のスーツはまだ真新しく、どこか着慣れていない様子だった。しかし、これからはその姿が日常になっていく。同時にそれは、日本の金融業界に新たな価値観が溶け込んでいく過程でもある。
<受賞者たちへの共通質問>
今後3年で成し遂げたいことは?
ごとう・みちてる◎1992年、東京都蒲田出身。慶應義塾大学卒業。East Ventures、メルカリ、CAMPFIREを経て、ディー・エヌ・エーに入社し、戦略投資推進室に勤務。2017年7月、給与即日払いサービスを手がけるペイミーを創業し、代表取締役に就任。
後藤をはじめとした、個性あふれる「30 UNDER 30 JAPAN 2019」の受賞者の一覧はこちらから。若き才能の躍動を見逃すな。