このデータは、米シンクタンク経済政策研究所(EPI)が実施した新たな分析で明らかになったものだ。アメリカのCEOの報酬は、1978年と比べて1000%近く増えたという。一方、民間企業で働く人の平均給与の増加率はわずか12%ほどだった。
2018年における「CEO対一般労働者の給与比率」は、278:1だ(ストックオプションの権利行使価格を考慮した場合)。しかしこの割合は、1989年には58:1だったし、さらに1965年にはわずか20:1だった。
EPI報告書によると、CEOの報酬が適正範囲を超えていることが、格差拡大の大きな原因になっているが、そうした要因はなかったことにされる場合があるという。こうした状況が、上位1%の報酬増加を加速させ、超高額所得者と下位90%の格差を広げている。
報告書が指摘する点でさらに興味深いのは、CEOの大半が多額の報酬を得ているのは、生産性が向上したからとか、その人が独特な能力や引く手あまたのスキルを持っているからではないということだ。CEOが巨額を手にできるのはむしろ、報酬額を決定するうえで絶大な影響力を持っているからである。CEOが報酬を減らされたり、重い税金が課されたりしても、経済にマイナスの影響が及ぶことはないだろう。
こうした問題を解決して、所得格差を縮小することは容易ではない。しかし、新しい政策を導入すれば解決につながるかもしれない。たとえば、所得の限界税率を再び高く引き上げたり、CEOと従業員の給与比率の差が大きい企業に対する法人税率を高く設定したりすることなどが考えられる。コーポレート・ガバナンス(企業統治)を改善して、ほかのステークホルダーたちにも影響力を行使できる手段を与え、報酬に対するCEOの要求を抑え込むことも可能かもしれない。
CEOの平均年間報酬と、民間企業従業員の平均年間報酬(アメリカ)
*インフレ調整後の報酬額(ストックオプションの権利行使価格を考慮した場合)