HSBCが毎年実施しているこの年次調査は、「生活」「キャリアの機会」「家庭生活」の3つを指標に行われているもの。今回は出身国以外で働く労働者1万8000人以上から回答を得た。
フィリピンの順位は昨年、26位だった。3ランク上昇したことについては、驚く人もいるかもしれない。そう考える理由の1つは、同国が外国人にとって住み、働きたい国としてではなく、国民の多くが外国に出稼ぎにいく国として知られていることだ。そしてもう1つの理由は、同国では暴力が横行し、多数の犠牲者が出ていることだ。
だが、外国人労働者としてフィリピンに暮らす人たちは、こうした問題をそれほど懸念していないようだ。フレンドリーな国民性と生活費がそれほど高くないフィリピンへの移住は、彼らにとって受け入れやすいことになっている。
HSBCの報告書は同国について、「熱帯性の気候と着実に成長を続ける経済によって、フィリピンは短期間のうちに、外国人が最も住み、働きたい東南アジアの国の一つになった」と指摘している。
フィリピン経済は確かに近年、急速な成長を遂げている。世界各国・地域の経済データを提供するトレーディング・エコノミクスによると、1人当たりGDP(国内総生産)は昨年、過去最高の3063ドル(約33万1800円)に達した。2020年には1960~2018年の平均である1653.98ドルを大幅に上回り、3277ドルになると予想されている。
また、1人当たり購買力平価GDPも増加しており、昨年には7599.19ドルを記録した(1990~2018年の平均は4969.71ドル)。
米シンクタンク、マッキンゼー・グローバル・インスティテュート(MGI)が昨年秋に発表した報告書によれば、フィリピンは向こう10年間に持続的な成長を続ける準備が整っている数少ない新興国市場の1つだ。これは主に、総固定資本形成(投資)が増加したことが影響している。
フィリピンは依然として、貧困に悩む国民が多い国だ。それでも、今年4月に発表された「世界幸福度ランキング」でも、中国の順位を上回っている。
一方、HSBCの報告書は、企業の駐在員が主な調査対象者だと考えられる。多くは各国に移住する人たちの中でも、高学歴で高収入だ。さらに、赴任期間はそれほど長くない。つまり、回答者らは外国での勤務を「冒険」と捉えている可能性がある。調査結果は、こうした点にも注意した上でみるべきものだろう。