ベッドを揺すれば睡眠の改善に? 新たな研究結果が示唆

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さらに同研究チームは、マウスを対象に同様の実験を実施しており、こちらもカレント・バイオロジー誌に発表した。同研究では、カゴを揺らすことでマウスが睡眠を始めるまでの時間が早まり、長時間眠る可能性が指摘されたが、人間に見られたような睡眠の質の改善効果は確認されなかった。

では、揺すられることが睡眠に効果的な理由は何だろう? どうやら周期的な外部の動きにより、頭の中の電気的活動に適切なリズムが設定され、それが睡眠を促進するようだ。こうした効果をもたらしているのは、バランスを感知・維持している内耳の前庭器官かもしれない。実際マウスを使用した実験では、前庭器官を持たないマウスの間ではカゴを揺らすことの睡眠効果が確認されなかった。

適切な内部リズムを設定することが重要であり、どのような揺すり方でも睡眠に効果があるわけではない。継続的に激しく揺する動きの場合は、おそらくあまり効果がないはずだ。睡眠誘発的な動きがどこから睡眠を破壊する動きになり、不快感や吐き気さえもたらすようになるのかはいまだに明らかにされていない。また、これが人によって、あるいは人とマウスでは異なることさえ考えられる。

さらに、人を対象とした今回の研究では、短期的な効果を見ただけだ。揺りかごベッドで数日、数週間、数カ月、あるいは数年眠った場合もこうした効果が持続するだろうか? より詳細な調査が必要とされるため、ベッドを巨大な揺りかごやケージに変える前に一度考えた方がよさそうだ。

これらの調査結果はどちらにせよ、近い将来生じる睡眠問題に対し、新たなアプローチを生む可能性を秘めている。

睡眠障害は広く見られる健康問題で、米国立心肺血液研究所(NHLBI)の推定では5000万~7000万人の米国人を悩ませている。薬の服用は長期的に見ると(あるいは短期的に見ても)良い解決策ではなく、その他の選択肢が強く必要とされている。成人も赤ん坊のように体を揺すられることで、すやすやと眠れるようになるかもしれない。

翻訳・編集=出田静

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