アップルがインドでiPhoneを発売したのは2008年。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、売上高は2011年には1億ドルとなり、2015年には10億ドルに達した。
ただし、アップルの当初の目標は、年間売上高を2020年までに50億ドルとすることだった。今年度の売上高は、その半分にも満たない18億ドルだ。市場調査会社カナリス(Canalys)によれば、インドでのiPhoneの出荷台数は今年、2017年から40%減少。市場シェアは約2%から1%程度に縮小したという。
人口およそ13億人のこの国は、テクノロジー業界にとって世界最大の未開拓市場だ。調査会社eマーケターによると、スマートフォンの所有率はわずか24%。ユーザー数は他のどの国よりも、急速に増加している。そのインドでアップルが目標を達成できない理由は5つある。
1. 価格が高すぎる
eマーケターは、インドで新たにスマホを購入する人は今年、3900万人程度になると予測している。だが、アップル製品の価格は消費者がスマホに期待する値段のおよそ2倍に当たる。
WSJによると、インドで販売されているスマホの75%以上が、250ドル以下だ。さらに、それらは郊外や地方のメーカーとは提携していない店舗で販売されている。
アップルと競合する中国のOnePlus(ワンプラス)やXiaomi (シャオミ)、Oppo(オッポ)、ヴィーヴォ(Vivo)などの各社は、200ドル未満のスマホの販売や、広告へのボリウッドスター、クリケット選手などの起用によって市場シェアを拡大している。
2. バッテリーの寿命が短い
ワンプラスがインドで行った市場調査によれば、同国では「充電ができない場所で長時間にわたって仕事をする人、混雑した都市を通り何時間もかけて通勤する人が多い」。そのため、スマホのバッテリーが高性能であることが極めて重要だ。
3. 国内生産していない
インドは外国製品に対し、20%の関税を課している。競合各社がインド国内で生産を行っている一方、アップルはiPhoneを中国から輸入している。
アップルは昨年、iPhone最廉価モデル「SE」の組み立て工場をバンガロール近郊に開設した。だが、中国の各社以上に安価な製品を販売し、それで十分な利益を確保できるだけのコスト削減を実現できるかどうかは分からない。
4. アップルストアを作れない
インドの消費者は大半が、都市部の店舗以外でスマホを購入している。それでもアップルは、都市にアップルストアをオープンしたい考えだ。
だが、インドは単一ブランドを扱う小売業者について、出資比率の51%以上が外国企業の場合、販売する製品に必要な部品の少なくとも30%を国内企業から調達することとしている。
アップルはiPhoneの部品の大半をアジアのその他の国で生産しており、店舗の開設は実現していない。WSJは、インド政府関係者はアップルに対し、国内での生産に向けた投資とハイテク関連での雇用の拡大を望んでいると報じている。
5. トップの離職
2016年以以降、インドでのiPhone事業を統括するポジションには2人が就いている。最初にその職務にあたったサンジャイ・カウルは翌年に辞任。後任となったのは、シンガポールを含む東南アジア事業を担当していたマイケル・クーロンだ。
だが、来年1月には新たに、フィンランドの通信機器大手ノキアの幹部、アシシュ・チョーダリが就任する予定だ。