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科学と医薬を担当。21世紀は生物学の世紀であると信じている

ポール・アレン(Photo by Kevin Winter/Getty Images)

ポール・アレンについて思い出すのは、インタビューが難しかったということだ。相手の機嫌を取るような態度を取らず、調子が出てくるまでには時間がかかった──。

米マイクロソフトの共同創業者であるアレンは10月15日、悪性リンパ腫の一種、非ホジキンリンパ腫の合併症のため死去した。2週間ほど前に、病期が再発したことを公表したばかりだった。

フォーブスは2012年、アレン脳科学研究所(Allen Institute for Brain Science)が作成に取り組んだ「アレン脳地図」や、幹細胞を使った研究について伝える記事を掲載した。

インタビューの中で、アレンは何度も同じ例えを口にした。「科学者たちは“オレンジ”の特定の場所に焦点を絞り込み、そこに向かってドリルで小さな穴を開け、問題の核心に取り組もうとしている」というのだ。すぐにはよく分からなかったのだが、彼の言う“オレンジ”は、「脳の機能に関する理解」だ。

そして、アレンによれば彼自身が目指していたのは、科学者たちがドリルでそれぞれのオレンジにより容易に穴を開け、より多くのことを学び、より迅速に行動できるようにするため、オレンジの外皮を取り除くことだった。

アレンはまた、コンピューターと脳の違いについても熱心に語った。

「人間の脳は(コンピューターに比べて)ずっと複雑だ。進化によって設計されたものだ。一つ一つの小さな部分が全て、それぞれに他とは大きく異なっている。どれも似てはいるが、違うものだ。だから、恐ろしいほどに複雑だ。脳がどのように機能しているかを理解するためには、これから何十年もの時間をかけて行うより多くの研究が必要になるだろう」

そのほかアレンは、ノーベル賞を受賞した脳神経科学者のエリック・カンデルのことについても詳しく話してくれた。アレン脳科学研究所で行われていた研究の大きな前進について語ったときには、興奮しすぎに思えるほどだった。

脳の配線図がどのようになっているのか、脳にはどのような細胞があるのか、そして幹細胞はどのように働くのか──。科学者たちがこれらについて理解するために役立つデータリソースがあるのは、アレンのおかげだ。彼を特別な存在にしているのは、自ら問題の核心に取り組むわけではなくても、オレンジの外皮をむくことに何度でも挑戦する意志を持ち続けたことだ。

今後も気候変動が続き、それでも将来の世代がサンゴ礁の海に飛び込むことができるとすれば、その一部はアレンの出資によって行われている環境保護活動のおかげだろう。彼は素晴らしいことをいくつもしてきた。

ジャズ・ミュージシャンのクインシー・ジョーンズやギタリストのヴァーノン・リードによれば、アレンはギターが「弾ける」人でもあったという。ぜひ一度、その演奏を聴いてみたかった。

いずれにしても、アレンは私たちに教訓を残してくれた。私たちは誰もがそれぞれに、少しでもオレンジの外皮をむこうとする努力を続けていく必要があるということだ。

編集=木内涼子

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