3Dプリンターが可能にする「古くて新しい」イノベーション

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3Dプリンター関連でよく話題にのぼるのは、航空機やロケットのエンジンなどの未来的分野での活用だ。しかし、鉄道などの地味な分野でも3Dプリンターの活用は広まっている。

米国の「ストラタシス(Stratasys)」の3Dプリンターで製造されたスペアパーツは、生産から60年が経過した列車の交換部品としても用いられている。「鉄道業界のニーズは多くの面で航空業界と似ている」と、Stratasysの製造部門バイスプレジデントのScott Sevcikは話す。同社の3Dプリンターは、航空業界から自動車業界まで幅広いジャンルの企業で活用されている。

ドイツの「シーメンス」の鉄道事業部「シーメンス・モビリティ」はストラタシスのFortus 900mcなどの3Dプリンターで、鉄道事業社向けのパーツをオンデマンドで製造している。製品寿命の長い列車が、特定のパーツの交換を必要とするのは、わずか2、3回程度であることも多い。従来の製造業者は大量の交換用パーツの受注を受けて生産を行なってきたが、一度も使用されずスクラップにされる部品も多い。

シーメンスは3Dプリンターによる部品製造で、必要なロットのみを製造し、時間とコストを削減することに成功した。同社の顧客の1社がドイツの鉄道会社の「SWU Verkehr GmbH」だ。シーメンスはストラタシスの3DプリンターでSWUが運行する鉄道車両向けのパーツを製造した。そこには、運転手向けにカスタマイズされたアームレストや、列車の連結器を覆う金属製カバーなどのアイテムが含まれていた。

しかし、シーメンス・モビリティの顧客部門を統括するMichael Kuczmikによると、3Dプリンターの積層造形技術を用いれば、単純に交換部品を製造する以上のことが可能になるという。

3Dプリンターを用いれば、これまでとは違う素材で部品を製造できる。古びた金属製のパーツをポリマー樹脂に置き換えることも可能だし、金属部品が必要な場合は、ステンレスやアルミニウムなどの新たな素材で作ることができる。

新たな手法で制作されたパーツで、列車の耐用年数を伸ばすことは、コスト面でもパフォーマンス面でも大きなメリットとなる。シーメンスとストラタシスらは、鉄道業界での3Dプリンターの活用範囲をさらに拡大していこうとしている。

編集=上田裕資

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