ビジネス

2018.06.08 10:00

起業して、138億円で売却──僕が再び、スタートアップの現場で働く理由


自らの経験をもとに組織改革や新規事業を牽引

ジラフへジョインした佐々木は、現在執行役員として、20名ほどの開発部門を管轄。採用にも関与し、組織をスケールしていくことに注力している。

「やっぱり、0→1で何かをつくるのって楽しいんですよ。でもそこから1→10にすることにも楽しさはある。僕自身、0→1よりも1→10のほうが得意な認識があって、ジラフのサービスはまさに今それが必要なフェーズを迎えている。立ち上げフェーズではまさにそれぞれが個人の力でなんとかしていたものを、組織を成長させるためには仕組み化や効率化が必要となってきます」



「急成長するときにはハレーションも起こりがちなので、そこを解決しながら組織を構築していくということには、これまでの経験を踏まえてできることもあると思う。その再現性を検証しながらミッションに取り組んでいく点に面白さというか、醍醐味を感じていますね」

また、「Peing-質問箱-」の買収にも関与。麻生がわずか2日ほどでディールの大枠をまとめ、佐々木はステークホルダーに対する経緯説明を行うなど、その買収を後押しした。もし株主らの賛同が得られなければ、自らの自己資金を出す用意もあったという。

2017年末からは事業責任者としてチームマネジメントやマーケティング、事業戦略に携わり、国内はもちろん積極的に海外展開を進めている。台湾、中国、ペルー、アメリカと堅調にユーザー数は上がってきており、海外における月間利用者数は2018年4月時点で約480万人となっている。「もともとの良さでもあるシンプルな世界観は保ちながら、多言語対応や収益化する仕組みづくりをしっかり行って、今後も海外へのプロモーションを進めていきたいと考えています」

誰かの人生を変えるほどのサービスを生み出したい

一度は経営者として組織の頂点に立ちながら、今は他の経営者のもと、一組織人として働く━━。自分がその立場を知っているぶん、代表サイドの「粗」が見えてきたり、やりにくさを感じたりすることはないのだろうか。佐々木氏は一組織人として働くことに特段のこだわりはないと話す。

「新卒から2年ほどNTTコムウェアでエンジニアとして働いていましたし、ポケラボのときも代表を降りて従業員として事業部の責任者を担うことや、グリーに出向してゲームプランナーとして勉強をさせて頂いたときもあります。ですから今更役職や立場に拘るつもりはありません」



「会社というものは基本的には株主のものですし、起業経験があろうとなかろうと、置かれた立場で最大限やれることをやる、というのが前提にあります。麻生と話していて、たまに判断が分かれることもありますが、決定的な不一致に至ることはないんですよね。基本的には彼の判断を尊重しています」

今期からは人事考課制度を改定し、互いのフィードバックや評価が人事と連動するよう、取り組んでいるという。

「働いている限り、やっぱり成長したいじゃないですか。同じ会社で働く仲間として、自然に麻生からも、同僚や部下からも指摘してもらえるようでありたいと思っています。個人の成長が組織としての成長につながるよう、みんなでレベルアップできるような仕組みを整えています」
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文=大矢幸世 写真=小田駿一

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