不具合による事故や負傷者の発生は確認されていないが、モデルSを寒冷地で使用した場合、路面の凍結防止剤に含まれる塩化マグネシウム、塩化カルシウムの影響によってボルトの腐食が急速に進行する恐れがあるという。
リコールの発表を受け、テスラの株価は3月29日の時間外取引で2.5%以上下落。同社の株価は3月12日以降、数日を除いて値下がりが続いている。
業績への影響はわずか
12万3000台となれば相当の数ではある。だが、筆者の考えでは、リコールが同社の財務状況に重大な影響を与えることはない。ボルトの交換にはボルトそのものの調達費用と人件費がかかるが、対象となる車が全て修理に持ち込まれたとしても、間接費と合わせた総額は約1000万ドル(約10億5900万円)と推計される。この金額は、2018年に予想されるテスラの売上高およそ196億7000万ドルの0.05%だ。さらに、修理を希望する人が所有者のうちの多数には上らない可能性もある。
投資家の影響
一方、「モデル3」の生産を急ぐテスラは、2つに分類することができる心理的影響を受けている。投資家と顧客の懸念だ。
テスラが12万3000台のモデルSを生産するには、4年を要した。だが、モデル3はその生産台数を1年もかけずに実現することを目指している。3月29日の時間外取引での値動きからも分かるように、投資家たちは今後も、モデル3をテスラにとってのもう一つのリスクと見なすだろう。同モデルに何か問題があれば、修理にかかるコストはモデルSを大幅に上回ることになる。
投資家の懸念をさらに強めているのが、モデル3が3月末までの実現を目指していた週産2500台を達成できなかったことだ。2月27日には格付け会社がテスラの格下げを発表したことから、同社株が今後さらに売られるとの懸念が強まった。投資家らは考えるよりもまず行動する(売る)状態に陥っている。
顧客の影響
顧客の心理は、テスラにとっての不確定要素とも言える。モデルSのリコールは対象となる台数が少ないと考えられることや現在の状況から、あまりこの問題にとらわれない人たちもいるかもしれない。
だが、モデル3については購入を遅らせる人たちがいるかもしれない。同モデルを購入して運転する人が増え、欠陥があればそれが明らかになり解決されるまで、待つことを選ぶ人が増える可能性もある。テスラの株価は今後も下落する可能性がある。短期的に大幅な値動きがあれば、顧客の心理により大きな影響を与えることになるだろう。