がんワクチン開発の新興企業、アルファベットなどから100億円調達

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米グーグルの親会社アルファベットと製薬大手の米イーライ・リリーが傘下のベンチャーキャピタルを通じて、機械学習を活用してパーソナライズした肺がん・胃がんワクチンの開発を目指す米国の新興企業、グリットストーン・オンコロジー(Gritstone Oncology)に9270万ドル(約100億円)を出資することが分かった。

カリフォルニア州エメリービルに拠点を置くグリットストーンは、シリーズBラウンドで調達した資金を面積およそ3990平方メートルの製造拠点の建設と、開発中の新薬の臨床試験に充てる計画。患者を対象とした臨床試験は、来年半ばにも開始したい考えだ。

アルファベットのベンチャー部門であるGVの関係者は、グリッドストーンの研究について、「世界を変える試みになる可能性がある」との考えを示している。また、イーライ・リリーのベンチャー部門、リリー・アジア・ベンチャーズによれば、同社が開発を目指すワクチンは特に、東アジアに地域に患者が多いがんに効果的だ。同社は今回の投資ラウンドでの最大の出資者となっている。

また、シリーズAに引き続き投資を決めた各社に加え、今回はニュー・インベスターズ・トリニタス・キャピタル、アレクサンドリア・ベンチャー・インベストメンツなど、中国のベンチャーキャピタルが新たに投資を行っている。
がん治療薬を手掛ける米クロービス・オンコロジー(Clovis Oncology)、ファーミオン(Pharmion)で上級管理職を務めたグリットストーンのアンドリュー・アレン最高経営責任者(CEO)は、免疫システムががんとどのように戦うかについての理解が進んだことがが、同社の事業を可能にしたと説明する。

細胞の突然変異によって引き起こされるがんは、細胞にあるタンパク質の一部が変化し、異常な細胞増殖が続く状態が起きたものだ。この状態が起きていることは、白血球の中のリンパ球の一種、T細胞の活動によって確認することができる。そして、T細胞にがんを攻撃させるには変化したタンパク質の特徴を教える必要があり、この変化したタンパク質を新抗原と呼ぶ。

グリッドストーンは患者個人のがんのサンプルを採取し、コンピュータを使ってがん細胞の表面に新たに出現した新抗原を特定し、その分析を実施。新抗原を組み込んだアデノウイルスを用いてワクチンをつくる。

編集=木内涼子

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