1936年から続くシリーズの伝統に加えて、今年、IWCがラインナップを刷新した「パイロット・ウォッチ」。その系譜をひもとくため、148年前、スイス北東部にあるシャフハウゼンの町、ライン河畔にあるIWC本社に思いを馳せよう。12業者であり、時計職人だったフロレンタイン・アリオスト・ジョーンズがアメリカ市場向けの高品質なポケットウォッチを製造するために、この地に"International Watch Company"を創設したのだ(のちに社名は頭文字をとりIWCとする)。
本社の1階にあるミュージアムには、創業当初に製造された伝説のジョーンズ・キャリバーはもちろん、後々まで銘機として知られるポケットウォッチ用「キャリバー52s.c.」といったIWCの礎となった機構が展示されている。携帯時計としては破格の精度を誇った「キャリバー52s.c.」の存在こそが、最初期のビッグ・パイロット・ウォッチがドイツ軍に採用されるに至った最大の要因だ。オリジナルの「ビッグ・パイロット・ウォッチ」は、視認性の高いシンプルな文字盤に、夜光塗料を施した数字が整然と並び、中央にはセンターセコンド針が配される。また、ジャケットの上から装着できるように、長いストラップを備えるのも特徴だ。士官が携行し、基地内に設置された精度の高いマリンクロノメーターが示す時刻に合わせたのち、その時刻を各パイロットに伝えたとされる。マリンクロノメーターと同等の精度を誇る、IWCのパイロット・ウォッチらしい使われ方だろう。
初フライトから80年が経った今年、パイロット・ウォッチの伝説にあらたなページが加わった。「パイロット・ウォッチ」のコレクションを刷新したのだ。その代表格が、歴史的タイムピースのひとつであるビッグ・パイロット・ウォッチを現代に蘇らせた「ビッグ・パイロット・ヘリテージ・ウォッチ 55」だ。55mmの大型ケースの中に搭載されるのは、現代のIWCが誇る高精度の自社製手巻きムーブメント、「キャリバー98300」である。
こちらはコレクターズ・アイテムといえるものだが、IWCの真骨頂はより実用的なモデルにある。ビッグ・パイロット・ウォッチを有するクラシックラインに加えて、サン=テグジュペリ、トップガン、スピットファイアといったすべてのラインナップが刷新されており、どれから紹介したらいいのか迷うほどだ。「マーク18(下写真)」では、初期のモデルに立ち戻ったデザインを採用している。チャプターリング内に三角形のインデックスが戻されたことで数字が強調されており、オリジナルにより近いデザインとなった。日付と曜日の表示もよりシンプルになり、視認性も高められている。ケース径が40mmとなったのも、日本のユーザーには朗報だろう。
このシンプルな3針モデルの進化はいつも大きな話題だ。マーク11の復刻として、マーク12が世に送り出されて以降、年を追うごとに進化し続けている。2012年に登場したマーク17に続いて、今年、登場したのがマーク18だ。ケース径が40mmとなり、“6”と“9”のインデックス復活以外は、基本に忠実に進化している。ケースバックにあるJu-52のエングレーヴィングが、この時計の原点を示す。
IWCの歴史からもわかる通り、その時代をリードする技術革新を続けながらも、ひとつのコレクションにおいて、入門者からコレクターまで幅広い要求を満たすモデルを提案し、価格帯もエントリーからハイエンドまで幅広く対応する。それこそが、このブランドの秀逸な点であり、長年、ウォッチファンに支持されてきた所以なのだ。
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