機械学習技術によるアプローチでは、当局が汚染対策を事前に計画できるというメリットもある。また、2008年に行ったような100以上の工場の操業を何週間も停止するという対策よりもピンポイントで臨機応変な対応が可能だ。
ワトソンを利用した解析を含む様々な対策を取ったことにより、2015年第1~3四半期では超微小粒子を20%削減できたとEPBは言う。このペースで行けば2017年までにPM2.5を25%削減するという目標も達成できそうだ。
問題は国土の広さ
しかし、中国の広大な面積を考えると、いくつかの注意が必要だ。冒頭の「一日4400人が死ぬ」というデータを公開した、米国の気象科学シンクタンク「バークレーアース(Berkeley Earth)」のロバート・ロードは「大きなスケールで見れば今後も良い結果が続くと考えますが、個々の都市や年度に関しては、限定的なデータの拡大解釈について注意が必要です」と言う。
その理由として、北京のような都市における大気汚染は気象に大きく左右されることが挙げられる。バークレーアースが発表した報告書「中国における大気汚染:濃度と発生源のマッピング(Air Pollution in China: Mapping of Concentrations and Sources)」の共同執筆者でもあるロードは、こう述べる。
「大気汚染物質が都市の外に流れるか発生源の近くに蓄積するかは、風によって決まります。汚染物質が大気中からどれだけ早く取り除かれるかには雨や雪が影響しますし、暖房用に燃やされる石炭の量や汚染物質がどれだけ上空に上昇するかには気温が影響するのです」と指摘する。
地域の傾向を断定するには通常数年分のデータが必要になるという。