レガシーで、社会を変える
社会課題が複雑化する中、共創の重要性が高まっている。
日本においても共創の数は増えてきているが、まだ十分とは言えない。
この状況を変えるのが、企業の中で孤軍奮闘する
Xtrepreneur(クロストレプレナー)たちだ。
Xtrepreneurとは、アントレプレナーでもイントレプレナーでもない、
次世代を担う、新しく多様な起業家だ。
彼ら・彼女らは、企業が積み重ねてきた価値をかけ合わせ、
一社が生み出すより何倍も大きなインパクトを生み出していく。
そんなレガシー(資産)のつなぎ合わせから生まれた、
様々なプロジェクトに光を当てることで、未来の社会をひらいていきたい。
社会にインパクトをもたらす価値を日本から。
Xtrepreneurの時代、はじまる。
PROJECT
受賞プロジェクト
GRAND PRIX
グランプリ
変形型月面ロボットの研究開発
タカラトミー、ソニーグループ、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA) 、同志社大学
宇宙空間および地球上で活動できる安価な昆虫型ロボットを民生玩具の技術を使って開発。いままで研究開発した簡易通信、省電力化、長寿命化、小型化などの技術開発をベースに描く技術の市場展開と昆虫型ロボットの市場展開を狙っている。
評価ポイント
・宇宙開発への貢献
・日本民間企業から世界最小の月面ロボット
・玩具業界からの宇宙開発参入の意外性
CIRCULAR ECONOMY
サーキュラーエコノミー部門
冷凍焼おにぎり残渣を発酵させたアップサイクル商品の共同開発
ファーメンステーション、ニチレイフーズ
ニチレイフーズの冷凍焼おにぎり製造時にどうしても発生してしまう「ごはんの残渣」を、ファーメンステーションの持つ独自技術によって発酵・蒸留。生成されたエタノールを利用したアップサイクル商品、「焼おにぎり」除菌ウエットティッシュを共同開発した。さらに、エタノール生成時に発生する発酵粕も飼料等に活用し、サーキュラーエコノミーにも貢献。両社では引き続き、未利用資源の活用を含めた共創プロジェクトを推進していく予定だ。
評価ポイント
・ロスしていたもののアップサイクル
・残渣は世界的にも大きな社会課題
・食品の残渣から食品以外の商品をつくる意外性
GX / CARBON NEUTRAL
GX/カーボンニュートラル部門
水田から発生するメタンガスの抑制でJ−クレジット創出!~環境負荷の軽減と経済性を両立する農業モデルの構築~
ヤンマーマルシェ、NTTコミュニケーションズ
ヤンマーマルシェとNTTコミュニケーションズは、水稲作における中干し期間の延長という日本独自の農法に着目し、水田から発生するメタンガスの発生を抑制・削減し、その削減量をCO2削減量に換算しカーボンクレジットを創出するプロジェクトを実施中だ。メタンガスの排出量削減だけでなく、創出されたJ−クレジットの販売を通じた新たな収益モデルの構築や収穫したお米のブランド化といった一次産業の活性化もめざす。
評価ポイント
・環境負荷の低減と生産者の収益確保を両立
・持続可能な食糧システム
・カーボンクレジット創出による新たなモデル
REGIONAL REVITALIZATION / DISTRIBUTION / MOBILITY
地域活性/流通/モビリティ部門
勝浦にぎわい創出プロジェクト
住友商事、セイノーホールディングス、KDDIスマートドローン、NEXT DELIVERY、エアロネクスト
千葉県勝浦市にて地域と関連企業で協力し、商店街等のECモールサイト、地域事業者が困っている配送のサポート体制、ドローン等のAdvanced Air Mobility、EVバン、量子コンピュータを活用した環境にやさしく効率的な地域物流の仕組みを実装することで、勝浦のにぎわい創出を目指すプロジェクト。まずは勝浦で事業モデルを構築し、より広域なエリアで各地域の方々と共に本仕組みを実装していくことで、物流存続、買物難民対策、地域の魅力向上といった全世界共通のテーマに挑む。
評価ポイント
・大企業含む業界を超えた5社以上の事業会社や、自治体、大学が連携
・物流危機、地方創生、脱酸素の社会課題解決
・地域とのきめ細かい対話により構築している取組み
WORKSTYLE
働き方部門
日本財団無人運航船プロジェクトMEGURI2040
日本財団、日本海洋科学、ウェザーニューズ、スペースコンパス、他
日本では少子高齢化により、船上で過酷な仕事を要求される海運の船員の人手不足・高齢化が進んでいる。船員の負担減少、離島航路の維持、海難事故の減少等を目指し、内航船の無人運航の実証実験と実用化を無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」により進めている。日本海洋科学、ウェザーニューズ、スペースコンパスなど数十社が参加。船を遠隔で操る陸上支援センターでは、船員の新たな働き方や労働力の創出も期待される。
評価ポイント
・多種多様な企業による事業開発
・危険の伴う船舶運航の自動化
・海洋の安全性、効率性の向上
WOMEN'S EMPOWERMENT / DIVERSITY
女性活躍/ダイバーシティ部門
女性が輝く社会の実現にはQOL向上が必須。
フェムテック領域のビジネス共創コミュニティー「Value Add Femtech™ Community」
NTT コミュニケーションズ、ネクイノ、ティーガイア、他
女性活躍推進が進む中、月経やPMS、出産、不妊、更年期など女性特有のライフイベントや健康課題も多い。しかし、女性を支援する各フェムテック企業のサービスは分散されている状況がある。そこで、フェムテック企業間でのデータ連携や利活用を行い、女性のQOLの向上を目指すフェムテックコミュニティー「Value Add Femtech™ Community」を2023年に創設。
評価ポイント
・女性活躍推進はグローバル且つ大規模な社会課題
・プラットフォーム構築による、機微なヘルスケアデータの共有
・業界や企業を横断するフェムテックデータ活用
アドバイザリーボード
COMMENT
21世紀に入ってから大きく企業価値を伸長させた企業を並べてみると「あること」に気づきます。
それは、それらの企業に必ず「社会運動的側面」が含まれているということです。
かつて社会運動・社会批判の矛先は資本主義と大企業に向けられたわけですが、いま世界では、社会運動・社会批判としてのビジネス、言うなれば「クリティカル・ビジネス」が増えているのです。
そして今回、審査の過程において、日本においてもこの大きな波がやってきていることを実感し、大いに力づけられました。
受賞企業の皆様に心からお祝い申し上げます。
PROFILE
1970年東京都生まれ。独立研究者、著作家、パブリックスピーカー。電通、BCGなどで戦略策定、文化政策、組織開発等に従事。著書に『ビジネスの未来』『ニュータイプの時代』『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』『武器になる哲学』など。慶應義塾大学文学部哲学科、同大学院文学研究科修士課程修了。
株式会社中川政七商店社外取締役、株式会社モバイルファクトリー社外取締役。
COMMENT
JAXA宇宙探査イノベーションハブの活動の一環として、共同研究宇宙分野への新規参入を目指す様々な分野の企業の皆様や研究機関の皆様との共創を進めてまいりました。今回の審査への参加を通して、カーボンニュートラルから地域活性、女性活躍といった非常に重要な分野で多くの企業が目標を共有し、そして有益な成果を得ていることに改めて気づきました。今回のアワードをきっかけに、企業の皆様の共創活動が国内から世界に、そして宇宙へと広がり、成果を上げることを願っています。
PROFILE
秋田県秋田市出身。筑波大学講師等を経て2004年からJAXA勤務。専門は宇宙機のための次世代エンジン研究。小惑星探査機はやぶさのイオンエンジン、技術試験衛星9号機搭載ホールスラスタなどに参加。2020年からは宇宙探査イノベーションハブ ハブ長として、招待宇宙探査を目指した官民の共創活動をリード。
COMMENT
環境問題や少子高齢化、働き方改革など、複雑な社会課題の解決には、システム全体を俯瞰し、多様なステークホルダーを巻き込むリーダーシップが不可欠です。想像力と創造力をもって、探索的に未来を描くこと。1社や1個人の目的を超えたパーパスを定め、複数社のリーダーたちの共感を束ねて1つのチームをつくること。本審査を通じ、これからの時代のリーダーシップのあり方を感じました。グローバルでもインパクトのある活動が、ここから広まっていくことを期待しています。
PROFILE
デザインアプローチの実践者。企業のパーパス経営から、人材育成プログラム、新規事業開発まで、数々の価値創造プロジェクトを主導。現在、大企業からスタートアップなど複数社のアドバイザーから、国の有識者委員まで幅広く従事。また、D&ADやGOOD DESIGN AWARDなど様々な審査委員を歴任するほか、数々のセミナー、カンファレンスにてキーノートを務める。Forbes JAPAN世界で影響力のあるデザイナー39名に選出。著書に『HELLO,DESIGN日本人とデザイン』。
COMMENT
日本でもオープンイノベーションと言う言葉は広まり、今では共創することは「面白そう」「社会に良さそう」と評価される様にはなりましたが、依然、各々の会社特有の組織文化やプロセスがあり、さらには業界を超えて共通言語なども乏しい中での協業は容易ではなく、圧倒的成功事例があるとは未だ言えない状況かと考えます。
そんな中も、この度の受賞者様のプロジェクトは、共創相手双方のビジョン・ミッションそしてビジネス意義について深く対話をされ、時間をかけてでもアライメントを図り、ウィンウィンの構図を作り上げる努力をなされた結果実現したものだと理解し、大変感銘しています。
特に「サステナビリティ」や「ダイヴァーシティ」などの大きな社会命題に対しては、1企業では挑めないため、業界を跨いだ協業が必須になってくるとも考えます。
今回の受賞者の様に異なる業界による協業だからこその面白さやインパクトが生まれるプロジェクトが増え、また、各社のコア事業へも良い影響・新しい気づきを与え、全体的に成長していかれることを大きく期待します。
PROFILE
サステナビリティ、ウェルビーイング、Web3領域などへのベンチャー投資家、兼ESGコンサルタント。日本初ESG重視型ベンチャーキャピタルMPower Partnersの創業にマネージング・ディレクターとして参画し、他複数のVCを率いる。
モルガン・スタンレーの投資銀行部門にてキャリアを開始し、グローバルM&AやIPO業務に従事。後に米国のドローンベンチャーの日本法人を立ち上げ日本代表に。
著書『これからは、生き方が働き方になっていく』(2018年4月、大和書房)。訳書『ミッション・エコノミー:国×企業で「新しい資本主義」をつくる時代がやってきた』(2021年12月、NewsPicksパブリッシング)。2018年よりウェルビーイング・コミュニティも運営。2児の母。
COMMENT
今回のアワードでは、様々な課題に取り組む多様なプロジェクトがノミネートされたことも大変印象的でしたが、多様な審査員メンバーが参加していることも非常に有意義でした。課題が複雑化しているからこそ、多様な視点をもってポイントを見極めることが、新たな社会可能性の発見に繋がることを感じたのと共に、ダイバーシティの重要性を改めて認識しました。本アワードをきっかけに、共創のコミュニティが拡大し、各プロジェクトの社会実装が加速することを期待しています。
PROFILE
1993年早稲田大学政治経済学部卒業後、住友商事株式会社入社、東南アジア向け通信インフラ輸出事業に従事。2007年に健康食品・医薬品のEコマースサイト「爽快ドラッグ」の社長に就任。
2014年よりシリコンバレーのCVC拠点Presidio VenturesのCEOを経て、2020年より経営企画部で中期経営計画、全社ポートフォリオ戦略、社内起業制度等を担当。
2023年4月より現職。
COMMENT
複雑に要因が絡み合う現代社会の課題を解決するためには、企業同士あるいは官民が手を取り合う必要があります。本アワードの審査を通じて、大企業のレガシーの掛け合わせによって新しい価値を生み出していく受賞プロジェクトのプロセス、そしてプロジェクト関係者の熱量に感動を覚えました。共創の価値を広く発信する本アワードが、社会課題の解決に取り組むメンバー同士の刺激となり、社会実装に向けた大きな前進になると信じています。
PROFILE
NTTグループ各社にて、主にマーケティング/新規事業開発に従事。シンクタンク・人材派遣会社出向、米国留学(MBA)を経て、NTTグループファンド出資のスタートアップの成長/Exit支援、Jリーグ他プロスポーツ業界とのアライアンス等を手掛ける。2018年大企業同士の共創コミュニティ「C4BASE」を立ち上げ、運営。2021年OPEN HUB for Smart Worldを設立、代表に就任。共創拠点であるOPEN HUB Parkは2022年日経ニューオフィスクリエイティブオフィス賞受賞。NTT Com ビジネスソリューション本部マーケティング部門長、NTT Com DD株式会社取締役。
CRITERIA
審査基準
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日本発・グローバル
世界にイニシアチブを取る
ポテンシャルがあるか -
インパクト
社会課題 / 世の中全体に向け
大きな影響をもたらすことができるか -
意外性
発想をゆさぶられるようなアセット・
レガシーの組み合わせがあるか
CONTENTS
スペシャルコンテンツ
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点在するデータを集約し大きなインパクトへ
──NTT comが共創の促進を通して目指す、フェムテック領域の成熟対談
鈴木 絵里子(Kind Capital ファウンダー兼代表取締役)
鵜飼 耕一郎(NTTコミュニケーションズ株式会社 ビジネスソリューション本部スマートワールドビジネス部スマートヘルスケア推進室主査) -
社会の課題解決には、企業レガシーの融合が不可欠
アドバイザリーボードが語る、『Xtrepreneur AWARD 2023』の意義対談
巽 達志(住友商事株式会社 執行役員 コーポレート部門DX・IT統括責任者、CDO/CIO)
戸松 正剛(NTTコミュニケーションズ株式会社 OPEN HUB 代表) -
XTREPRENEUR CREATE A NEW WORLD
-クロストレプレナーは、21世紀の「社会運動」である-
企業が、そして日本が生き残っていくために必要なのは共創と新結合である。 審査員が感じた事業共創の力と現在地とは。