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2025.03.21 16:00

ゴリラ研究が解き明かす「食」の力──人類最古の文化が導く、現代のウェルビーイング

2025年3月、「World Happiness Report (世界幸福度報告書)」に初めて「食」の章が設けられた。なぜ「食」は人々の幸福度を高めるのか。その意義を探るため、霊長類研究の第一人者・山極壽一と、味の素執行役常務・森島千佳が食事を囲んで語り合った。


人々の幸福度を測る指標として日本にも根付いてきた「ウェルビーイング」。その指標を数値化した世界基準のレポートのひとつが、英オックスフォード大学・ウェルビーイングリサーチセンター、ギャラップ、国際連合の持続可能開発ソリューションネットワークが共同発行する、幸福度調査のレポート「World Happiness Report」だ。

今年、初めて「食」に関する章が設けられた背景には、味の素と同レポートのデータを取りまとめてきたギャラップによる画期的な2022年の共同調査がある。同調査では、料理を楽しむ人々のウェルビーイング実感が楽しまなかった人と比べて20%も高いことが判明。さらに、誰かと食事を共にする「共食」の頻度が高い人ほど、ウェルビーイング指数が高い結果になった。

この結果について、「人類の進化における『共感』や『社会性』にとって、『食』は欠かせないものである」と指摘するのが、山極壽一だ。人間にとっての食の本質をひも解いたとき、AI時代における「食がもたらす本質的なウェルビーイング」が見えてきた。

人類進化と食事の社会的役割

森島千佳(以下、森島):私たち味の素グループは、「アミノサイエンス®で、人・社会・地球のWell-beingに貢献する」というパーパスを掲げて、ただ食べるという行為だけではない、「食」の可能性について考え続けています。山極先生は長年ゴリラの研究をされていますが、そもそも人類の進化における食事の意味についてどのようにお考えでしょうか。

山極壽一(以下、山極):食事は人類最古の文化だと、僕は考えています。まず、サルたちにとって食べ物はけんかの原因なんです。食べ物の量は自然界では限られていますから、鉢合わせすれば取り合いになり、それを防ぐために、あらかじめお互いにどちらが強いか弱いかを決めておいて、強いサルが独占する。弱いものはその場から去る。そういうルールをつくってきたわけです。

森島:ゴリラやチンパンジーなど、類人猿の場合は違うのでしょうか。

山極:類人猿は、サルに比べて胃腸が弱く、熟した果実に依存せざるをえませんでした。そこから食べ物の「分配」という行為が生まれたんです。特に巨大なフルーツの分配は頻繁に起こる。人類以前から、食べ物を分かち合う行為は始まっていたんですよ。

森島:人類はそこからさらに進化を遂げたのですね。

山極:人類の祖先が画期的だったのは、食べ物を運び始めたことです。サバンナで暮らすようになると、そこには木が少なく、肉食動物から身を守るために限られた安全な場所で、女性や子どもを待たせなければなりません。グループのなかで屈強な者は遠くまで食べ物を探しに行き、そこに運んでくる。このために二足歩行が進化し、手が自由になっていきました。

同時に、待つ側は「見えないものを欲望する」という新しい精神性を獲得し、運ぶ側は「待っている仲間のことを想像する」ようになった。ここに人類特有の共感力が芽生えたのです。

森島:食べ物を通じて、想像力や共感力が育まれていったわけですね。

山極:さらにサバンナでは、集団の規模を大きくすることが有利でした。外敵の発見効率が上がり、自分が狙われる確率も下がる。ただし、集団が大きくなれば、仲間の特徴や関係性を記憶する必要が生じる。その結果、脳が大きくなっていったんです。これを「社会脳」と呼んでいます。

森島:「食」を通して社会性が必要になったからこそ、脳が大きくなっていったと。

山極:ええ。約200万年前から、人類は火を使うなどの調理を始めます。これにより消化効率が上がり、消化に使うエネルギーを減らすことができた。その分のエネルギーを脳に回せるようになり、さらに食事時間も短縮され、その分を社交に使えるようになった。これらの要因が重なり、人類は複雑な社会構造を築いていったのです。

森島:脳が大きくなったから火を使ったというより、火を使い調理したことで脳が発達したとは、驚きです。そして共食はそのもっと前から本能的に備わっている人間のDNAのようなものなのですね。

実は当社では、商品の提供価値のひとつとして「人と交わる歓び」を定めていますが先生のお話を伺って、それが人類の本質にかかわることなのだと、納得しました。

現代社会における「共食」の可能性

──日本では今、ひとりで食事をする「個食」の増加が目立っています。これについてはどのようにお考えでしょうか。

山極:食事を介して社会性を身につけてきた人類にとって、それは本質的な部分での揺らぎを意味します。ただし、これは単純な問題ではありません。歴史的に見れば、食事は信頼関係を築く場として戦略的に活用されてきた面もある。

例えば、宴会での席順や、食事の作法など、ある種のしがらみも生んできた。コンビニやファストフード店は、そうした社会的プレッシャーからの解放を実現したとも言えます。

森島:コミュニケーションの煩わしさから解放された一方で、人々は孤独も感じているように思います。

山極:例えばトイレで弁当を食べる人がいるという話がありますが、それはひとりで食べている姿を見られたくないという気持ちの表れですよね。自分が望まないときは別としして、人と食事をするという行為は、自分が社会の一員であるという安心感を保つ重要な行為であることは間違いありません。

森島:そうしたなかで、私たちが注目しているのが地域のコミュニティづくりです。東日本大震災後、味の素グループは被災地で移動式の料理教室を8年半続けましたが、一緒に料理をつくり、一緒に食べるだけで、困難な状況下でも笑顔が生まれるのを目の当たりにしました。

山極:子ども食堂の広がりも、そういった文脈でとらえることができますよね。全国に9,000カ所以上ある子ども食堂は、単なる食事提供の場ではなく、新しいコミュニティの形成の場となっています。食事を共にすることは、言語を超えたコミュニケーションなのです。五感のうち、味覚や嗅覚は個人差が大きく、言葉で正確に表現することが難しい。しかし、同じ食事を一緒に楽しもうとする気持ちが、人々を結びつけるのです。

森島:今回「World Happiness Report」に「食」の章が設けられることは、これまで当たり前すぎて見過ごされてきた「食」の価値が、あらためて評価される契機になると期待しています。

山極:実際、AI社会が進展するこれからの時代、食事という行為はますます重要になると思いますよ。なぜなら、食事には効率性や生産性とは異なる価値があるからです。時間をかければかけるほど、人と人との信頼関係が深まる。AIにはできない、人間らしい営みとして、食事のもつ意味は今後さらに大きくなるでしょう。

森島:今日は、食のもつ可能性をあらためて実感しました。当社も今後は栄養価やおいしさに加え、人と人をつなぐ食の力に一層注目していきたいと思います。

「World Happiness Report 2025」における「食」

オックスフォード大学ウェルビーイングリサーチセンターのJan-Emmanuel De Neve教授らの研究チームにより、「Sharing meals with others How meal sharing promotes happiness and social support」と題する章が設けられることが決定した。味の素とギャラップによる共同調査の結果も活用され、食を通じた幸福度向上の可能性が科学的に検証される。

World Happiness Report 2025はこちら

味の素社/ギャラップ社 調査レポート

味の素株式会社
https://www.ajinomoto.co.jp/


やまぎわ・じゅいち◎人類学者、霊長類学者、総合地球環境学研究所所長。第26代京都大学総長。アフリカ各地でゴリラの行動や生態を研究し、人類に特有な社会特徴の由来を探究。『共感革命』『家族進化論』など著書多数。

もりしま・ちか◎味の素 執行役常務 サステナビリティ・コミュニケーション担当。1986年に入社。ダイレクトマーケティング部長を務めた後、執行役員家庭用事業部長を経てサステナビリティとコミュニケーションの担当に。2021年6月に執行役、2023年4月より現職。

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